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地磁気観測所テクニカルレポート 第03巻 第02号, p.1, 2005年12月


第11回IAGA地磁気観測国際ワークショップ開催報告 −測器比較観測とその結果−


岡田正實,外谷健,小池捷春,大和田毅,中島新三郎,重野伸昭,室松富二男,大川隆志,徳本哲男,今泉孝男,田中智巳,澤田正弘,岩瀬由紀,生駒良友,海東恵美,小池哲司,芥川真由美,熊坂信之,亀屋暁人,上杉忠孝,赤司貴則,高橋博,長谷川浩,石田憲久,横山貢,山岸功実,秋田陽子,熊谷徳揚,岩片博英,尾瀬三千代,小出孝,石井美樹,藤井郁子


要旨

 地磁気観測及びデータ収集・処理に関する第11回IAGA地磁気観測国際ワークショップは,2004年11月に32か国147名が参加して日本で開催された.測器セッション(11月9〜12日)は地磁気観測所で開かれ,絶対観測測器の相互比較観測,地磁気観測研修(トレーニング)等が実施された.プレワークショップ観測期間(10月4日〜11月19日)には変化計の動作試験も行われた.学術講演セッション(11月15〜17日)は研究交流センター(つくば市)で開かれ,各国の研究者から口頭又はポスターで研究成果が発表された.
 
  ワークショップの日本開催が1999年にIAGA第5部門(バーミンガム)で決定されたのを受け,全体の準備・運営を行う「第11回IAGA地磁気観測国際ワークショップ国内組織委員会(LOC,委員長湯元清文九州大学教授)」が2002年5月に発足した.当所ではそれ以前に「IAGAワークショップ(柿岡)準備委員会」を設置し,準備を進めていたが,LOC発足とともに,準備委員会は「LOC事務局」(以後柿岡事務局と呼ぶ)へ移行した.本所(柿岡)の全職員が柿岡事務局員となり,諸準備,当日の作業及び報告書作成等に取り組んだ.本報告は,当所職員がLOCの柿岡事務局として関与した各分野の経過,内容,成果及び関連資料等を取りまとめたものである.
 
  準備の一環として,磁気儀観測点の地点差観測を測器セッションの前後に計3回実施するとともに,地点差の時間変動,自動車による磁気ノイズ等の調査も行った.外国から測器を搬入・搬出する際のトラブルを避けるために,関係機関と相談し,申告時の注意事項を参加者に知らせるとともに,入国者の測器リストと地磁気観測所の誓約書を税関に提出した.相互比較観測の募集は,セカンドサーキュラーとホームページに載せて関係者に知らせたが,最終的な参加は磁気儀19台,磁力計10台であった.
 
  測器セッション当日は,相互比較観測参加者の作業補助,測器保管,相互比較観測データの処理,地磁気観測研修補助などに加え,受付・会計関係,昼食準備,バス運行管理など多岐にわたる作業があり,当所職員に加え,気象研究所,国土地理院及び大学などの関係者等も手伝った.参加者が測定・記入したデータは,担当者がパソコンに入力し,地磁気観測総合処理装置の暫定毎秒値を使って器差を計算し,速やかに観測者へ還元した.なお,測器セッション期間中は磁気嵐が発生したため,地磁気変動が大きく,相互比較観測への影響が懸念されたが,特段の支障はなかった.
 
  参加した磁気儀は,全てFT型磁気儀(Fluxgate theodolite)であった.1秒角程度の分解能を持つ測器では,標準偏差が偏角で6秒程度,伏角で3秒程度であった.19台の間の相対器差は,偏角で20秒,伏角で6秒以内のものが多く,基線値に対する全体平均は偏角-3.8秒,伏角2.3秒であった.
 
  磁力計の相互比較観測は,今回初めて2つの異なる方法を併用した.自然磁場を測定し,比較する方法では,異常に大きい差を示す1台を除く平均が-0.58nTであった.他の方法は,磁力計検出器に交流磁場を与え,その周波数と計測値を比較することによって,広い帯域での器差を求めるものである.基準周波数に対する器差の依存性を見ると,2つのグループがあり,一方のグループは換算値(原子核回転磁気率)γpとして1960年のIAGA決議の値を使用し,他方は1992年以降に提唱された値を使用していると判断される.
 
  プレワークショップには,ハンガリーのdIdD磁力計,東北大学のフラックスゲート磁力計(FGE-91 type)及び京都大学のプロトン磁力計(KM-622)が参加し,変化計の動作試験が行われた.長時間のランニングテストや温度試験などを通じて,測定値のばらつき,データの安定性,温度依存性,精度等を明らかにした.期間中に新潟県中越地震(柿岡震度3)があり,検出器の吊り下げ機構の安定性(振動特性)を見ることもできた.
 
  地磁気観測研修(トレーニング)は,Rasson博士とRasmussen博士を講師に迎え,アジアをはじめとする地磁気観測の発展途上国の若手技術者等を対象にして開かれた.相互比較観測の参加者も自由に聴講できるようになっていて,絶えず20名前後の受講者がいた.午前中(3日間)の講義では,地磁気の発生・変動の仕組み,測器の測定原理,絶対観測と変化観測の関係などの説明があり,午後(2日間)にFT型磁気儀を用いた実習が行われた.
 
  測器セッション期間中にパネル展示があり,過去の測器(写真),地磁気観測所業務,国土地理院の磁気図などが紹介された.
 
  学術講演セッションは,6つのサブセッション(観測機器及び測定技術,データ収集・処理・配信,調査観測,全球ネットワーク,観測所データの応用,地磁気観測所−将来像)で構成され,各国の研究者から45件の口頭発表と70件のポスター発表があった.当所職員が関係する発表は7件であった.最後に測器セッションの報告があり,相互比較観測の暫定的結果が紹介された.プログラム編成は国際プログラム委員会によって行われたが,会場の準備,投稿原稿の取りまとめ,当日の運営,プロシーディングの作成等の実務は柿岡事務局員が担当した.なお,プロシーディング(英文)は2005年5月に発行・配布されており,その中に測器セッションの報告も掲載されている.
 
  関連行事として,開会式・歓迎会,バーベキューパーティ等が地磁気観測所で,懇親会と閉会式がつくば市内で開かれた.また,つくば市内の研究所見学ツアー(2回,14名参加),週末には筑波山ハイキング(41名),袋田の滝・笠間陶芸の森バスツアー(40名)が企画実施され,これら一連の行事を通じて参加者相互の交流を深めた.参加者の便を図るために,宿泊施設の斡旋,つくば−柿岡間の無料バスの運行,会場でのインターネット・メールのサービス,飲み物のサービス,昼食(柿岡会場)などが準備された.
 
  ウェブサイトをLOC総務部会長(亀井豊永氏)の所属する京都大学内に立ち上げ,ワークショップの紹介,参加登録の受付,プログラム通知,サーキュラーの掲載,交通手段の案内などを掲載した.また,専用のメールアドレスを設け,参加者との連絡等に活用した.



[全文 (PDF; 日本語; size:33032KB)]


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