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地磁気観測所要報 第12巻 第01号, p.15, 1965年3月


1958年2月11日の極磁気嵐と極冠帯異常電離について


永井正男,羽倉幸雄


要旨

 1958年2月11日の極磁気嵐と極冠帯異常電離について解析した結果,次に示すような特徴的な事柄が明らかになった.
  (1) 10日の12時00分に極光帯の昼側で急激な異常電離(PCA)A が始まった。そして1〜2時間後に極光帯の全ての領域を取りまいて発達した.その後はゆっくりと発達し,11日の01時26分におこった急始変化(SC1)の直前では極冠帯および極光帯の全領域をおゝうに至った。
  同時に急始変化の13時間前から極磁気嵐が始まり,異常電離の発達にともなって次第に活動的なった。この擾乱は通常のDst場がきわめて小さいこと,および擾乱の生因が極の電離層に異常電離を起した高エネルギーの太陽宇宙線の侵入と直接関連ずけられるために特別な擾乱であると考えてよい.この擾乱をDP(Pre SC)という記号であらわす。
  12時30分には永田および国分によってえられたSqpの電流系から, DP(Pre SC)の電流系への移行が見られた.いずれの電流系も,午前の側では時計廻り,午後の側では反時計廻りで同じ型を示すが,Sqp場が極冠帯に限られるのに反して,DP(Pre SC)場は極光帯の夜側で増大が見られるのが特徴的である.
  (2) 極冠帯の全域にわたって急始変化(SC1)のすぐ直前に電離の異常増大が見られた((PCA)pre SC)これはAxford-Reidが述べている惑星空間における微粒子流の2つの衝撃波による加速機構と同じ原因によるものと考えられる.
  電離層の数多くの資料の解析から侵入粒子の衝突領域に関する進歩したパターンがえられた.侵入粒子のフラックス密度の増大につれて,衝突領域の北限は明らかに地磁気北極の方向へ移動した.一方南限はほとんど変動せずに約60°の緯度にとゞまった.
  (3) 2月11日の01時26分と01時59分における引き続いて起った急始変化(SC1及びSC2)の電流系が示された.SC1の電流系は多くの研究者によってえられた電流系とほとんど同じ型を示すが,通常の急始に比ベ電流は大きく又Dsc揚が極光帯においてかなり拡がっているのが見られた.極冠帯の中心を流れる平行電流は地磁気地方時において20時から08時の方向へ流れた.一方,SC2における電流系はSC1における電流系とDsc場の向きが全く反対であった.すなわち午前の例では反時計廻りを示し,午後の側では時計廻りを示して,極冠帯の中心を流れる平行電流は09時から21時の方向へ流れた.これは永田と阿部によってえられたSC*の電流系と,電流の大きさは非常に異なるが,向きはほとんど同じである.
  これら2つの急始変化と一致して極冠帯ブラック・アウトの領域も又2段階の膨張が見られた.補正した地磁気座標を用いて,極冠帯ブラック・アウト領域における境界の変動と異常電離領域の緯度変化が詳細に解析された.その結果,2段階に示される異常電離はBrownなどによって報告されている急始異常電離の一種と考えられる(SCA1 およびSCA2).急始異常電離の原因は,地磁気急始変化に対応する2つの衝撃波の影響によってしぼり出されたVan Allen帯からのエレクトロン降下に帰せられる.この想像は同時に観測された亜極光帯の烈しいオーロラの出現によっても支持される.
  (4) 極冠帯の中心部を流れる平行電流の向きについて,Thuleにおける毎時値を使って,急始を中心に−24時聞から+24時間まで解析がなされた.−12時聞から−1時間までのDP(Pre SC)においては平行電流の向きは08時〜13時を示した.又+3時聞から+7時間までのDst場の発達過程においては07時〜08時の朝方に偏した時間を示した.一方+10時聞から+18時間までのDst場の回復過程においては午前の側から午後の側へ次第に移行し11〜13時を示した.すなわち極冠帯の中心部を流れる平行電流の向きは水平ベクトルの大きさには無関係で,Dst場の発達過程では朝方に偏し,回復過程では次第に午後の例へ移行することがわかった.



[全文 (PDF; 英語; size:1543KB)]


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