Sano, Y., Ondoh, T.
Development of Magnetic Bay Disturbances and Associated fmin Increases
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 1-24, December, 1966
要旨
地磁気湾型変化の形態とそれに伴なう電離層の fmin 権力ロ領域との関係を調査した。結実は真夜中から日中にかけて起こる両現衆は非常に対応がよく,一般に地磁気擾乱がかなり発達してから fmin 増加領域が出現し,その領域は地磁気擾乱パターンに密接な関係を持って出現し変化する。地磁気湾型変化の3つの種矩におのおの対応する fmin 増加が比較的はっきりと区別され,その特性もある程度明らかになった。これらの結果と最近の磁気圏の磁場および高エネルギー粒子観測結果,報告されている理論的結果を比較し,これらの現象の概要について簡単に議論した。
最後に,地磁気湾型変化時の Dst-feld の発達および高緯度湾型変化と低緯度湾型変化の出現の対応性についての簡単な統計結果について報告した。地磁気湾型変化の形態も地磁気嵐のそれとほとんど同じであることが明らかになった。
Nagai, M.
Directions of the Straight Currents in the Central Part of the Polar Cap ( I )
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 25-42, December, 1966
要旨
極磁気擾乱におけるDS場の平衡電流系を毎時値を使っていくつか書いてみると,まず極光帯を流れる electrojet が storm time によって大きく変化することがわかる。このほかに極冠帯をほぼ平行して直線的に流れる電流があり,DS場では大体地磁気地方時の9時を示すことが報告されている。ここでは極冠帯を流れる直線電流の傾きがどのように変化するかを調べてみた。使用した資料および解析方法は,Thule の水平成分Hおよび偏角Dの毎時値から5静穏日の平均をさしひき,凾gおよび凾cの値から地磁気座標における刧]m(北成分+),凾xm(東成分+)を算出し,凾wmおよび凾xmによるベクトルの方向から地球自転による子午線の移動(1時間15度)をさし引いて,直線電流の方向を真夜中の子午線を基点とする地磁気地方時によってあらわした。
結果の概要は次のようである。
(1)July'57〜Dec.'58の18月間における5擾乱日の極冠帯直線電流の方向は6〜12時の間に大部分がふくまれるが,その他の時間を示すものもいくつかあり,中には太陽方向と180度異なるものもあって,0〜24時のかなり広い範囲にわたって分布していることがわかった。
(2)5擾乱日の平均を用いて,直線電流の平均の方向を求めると9.1時を示す。この値ほ今までの研究者によって報告されてきたDSのベクトル方向とほぼ一致している。
(3)直線電流の方向の季節変化を調べてみると,6月(夏至)でもっともおくれ,12月(冬至)でもっとも早くなり,大体9時±2時間の変動を示している。これを水平ベクトル√刧]m2+凾xm2 の大きさの季節変化とくらべると,負の大変よい相関を示す。すなわち6月で160γの最大を示し,12月で60γの最小を示す。
(4)日変化を調べてみると,正午でおくれ真夜中で早くなり,振幅は±1時間で季節変化の半分を示している。又水平ベクトルの大きさの日変化は正午で最大160γ,真夜中で最少70γを示し,振幅は季節変化と大差がない。
(5)Dst の発達過程と消滅過程における直線電流の方向の変化にほ,2つの基本的なパターンが見られる。一つはきれいな扇形を示しながら朝方から午後へ(07時〜15時),反時計廻りのベクトルの回転を示す。他は Dst の発達過程では8〜10時を示すが,Maximum stage をすぎると6時から3時の側へ時計廻りのベクトルの回転を示し,時には真夜中に達することがある。主相の発達の明瞭でない地磁気嵐においてはベクトルの回転方向もはっきりしない。また2つのパターンがくみあわされたと考えられるものも存在する。
Yamaguchi, Y.
Notes on the Geomagnetic Disturbances for the Pre-SC stage of PCA
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 43-56, December, 1966
要旨
PCA は Solar sub-cosmic ray が,極域下層電離層を異常電離することによって起こり,同時の磁気擾乱とは対応しないといわれている。たまたま1958年2月11日の磁気嵐に先行して起った PCA の場合には,極光帯で PCA が発生するのと,ほとんど同時に磁気擾乱が起こり,両者の問の何等かの関係が想像された。IGY 中に起った PCA について,この種の磁気擾乱を調査した。数例が見出された。しかしながら,これらの磁気擾乱は,AA と密接に関係し,PCA との直接的関係は認め難い。
Yanagihara, K., Shimizu, N.
Equatorial Enhancement of Micropulsation pi2
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 57-64, December, 1966
要旨
IGY 期間の早回し記録を使って地磁気脈動 pi-2 の赤道地帯における振幅増大を見出した。その日変化振幅比の緯度による変化などの特性は他現象の場合と大体同じようである。この現象をおこす原因について考察した。
Gondo, G.
The Observation of ELF Electromagnetic Field from 3 to 30 cps (partT)
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 65-78, December, 1966
要旨
IQSY 期間中用いた ELF 覿測の装置について報告する。ELF 帯は商用電源周波数に近いので,それの混入によって受信信号の有意性が失なわれるのが最大の懸念であったが,フィルターの使用によって一応観測出来た。この有意性は,柿岡一館野,柿岡一女満別,とくにいわゆる砂丘地帯である千浜と柿岡との同時観測によって確められた。
この電磁変化の細かい分析は次に報告する予定であるが,とくにこの周波数帯の電磁波はいわゆる8c/s,14c/sのシューマン振動から成り立っていることが確められた。
Yanagihara, K.
Earth-Ionosphere Cavity Resonances Excited by Horizontal Dipoles and Magnetospheric Origin
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 79-84, December, 1966
要旨
水平双極子によっておこされる大地電離層間空洞内の共振の電磁場を計算し,それを超高層から来る原因によっておこされた超低周波帯(ELF)現象に通用して観測と比較した。その結果 ELF として観測される現象には雷活動に原因するものと超高層から極光帯に入射する原因によるものとの両方のあることが推論された。
桜岡勉
MO-P型核磁気儀による水平、垂直成分観測とその補償磁場
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 85-98, 1966年12月
要旨
MO-P 型核磁気儀は標準磁気儀(A-56)にかわり副準器として絶対観測に常用することを目的として設置されたものである。この磁気儀の仕様は全磁F,水平分力Hおよび鉛直分力Zを精度0.3γもしくはそれ以上で観測できるようになっている。
この磁気儀全体については,いずれ報告される予定であるが,ここでは観測に常用するために加えた二,三の改善,主として補償電源について述べる。
HおよびZ成分の観測の場合には,へルムホルツコイルによってほかの一方の成分をベクトル的に打消すが,このときの補償磁場の安定度が観測精度を決定する一つの重要な要素になる。最初に設計製作された補償電源による場合にほ,1時的に補償コイル電流を切ったとき,あるいは電流値を2分の1などに切換えるとその後の変動が大きく,連続観測にはこの大きな変動が直接的に,あるいは観測時間を長くすることから間接的に誤差の原因となり,期待の観測精度を得るには困難である。
その後,Dummy load および補償抵抗を入れることによって,大きな電流変動の起らない安定した補償電源を得ることができた。観測精度に影響を与えないためには,補償磁場を40γ以下の変動におさえればよい。これに対して,電流の安定度は1時間で1×10-2mA(補償磁場7γに相当する)以下であり,短時間の楊合3×10-3mA(2γ)以下となった。
この補償電源を使用して観測した1965年10月の結果では,|F−√H2+Z2|の最大は0.4γ,平均で0.1γである。
久保木忠夫
柿岡地磁気観測所の構内の磁気測量結果
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 99-116, 1966年12月
要旨
柿岡地磁気胡測所の構内の精密測量を1955年に行ったことがありたので,この結果を報告する。従来行われた結果とくらべると,細かい磁気異常がいくつも見つかった。これは地形からくるもので,一般に平坦な所は,等磁力線がゆるくなっている。とくに磁気異常と思われるものは,空中電気覿測室の東側で鉛直分カ-146γ,水平分カ-93γであった。これはおそらく井戸およびその吸水管の鉄によるものと考えられる。この外に30〜50γくらいの磁気異常が数ケ所あるが,いづれも崖や凹地などの地形によるもので,本質的な磁気異常でない。
磁気的に平坦な場所は,地形的にも高低差のない平坦な場所である0 標準磁気儀室や新絶対室その他の観測室の回りは割合に平坦な所である。
新しい観測室を作るときは地形的にも平坦な所にすることが望ましい。
今実
日本における地磁気変化異常と関聯した浪江他2、3点における地磁気観測およびその結果
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 117-126, 1966年12月
要旨
UMP(地球内部開発計画)にもとずいてIQSY期間を対象に,日本における地下の電気伝導度の異常を探究するグループが構成された。地磁気観測所もその一員として,主として福島県浪江において地磁気3成分の連続観測を担当したので,その観測と地磁気変化の特性について報告する。
久保木忠夫, 大島汎海
日本における地磁気変化ベクトルの異常について(第3報)−日本の固定観測所の特性−
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 127-198, 1966年12月
要旨
地磁気変化ベクトルの水平分力ΔH,偏角ΔD(HΔDの意味),鉛直分力凾yの間には次の関係がある。
ΔZ=A・ΔH+B・ΔD
この式の係数A・Bの周期に対応する特性の変化とその周期のときの分散を,日本の5つの固定観測所女満別・柿岡・鹿野山・下里・鹿屋について求めた。(第1〜5表,第8図)周期が短くなるとその周期特性は大きく変り,A・Bの分散も大きくなる。下里において Duration 2〜3分のBの分散が最大であり,その値は±0.9である。鹿屋のAと女満別のBの分散がもっとも小さく±0.04である。
女満別におけるΔZ/ΔD(ほぼBに等しい),柿岡・下里・鹿屋におけるΔZ/ΔH(ほぼAに等しい)は日変化をする。その振幅は0.1〜0.27である。これはかなり大きい量であり,細かい変化を取扱う研究でほ無視出来ない量である。この日変化はΔD/ΔHまたはΔH/ΔDと Duration の日変化によってひきおこされる。しかし一定の Duration に換算されたA・Bは日変化をしない。(第12〜22図)
ssc や si の水平分力の Duration は北にある観測所ほど小さいが,日変化の振幅は大きい。偏角の Duration は水平分力のそれより小さい値で,日変化も小さい。また水平分力の Duration の値は太陽のオルフ数が大きくなると小さくなる0この経年変化のため ssc や si のΔZ/ΔHの日変化ほ太陽活動度に影響をうける。
鹿野山観測所は柿岡の真南100kmの所にある。ここではバーキンソンベクトルや係数A・Bは柿岡のそれによく似ている。しかし鹿野山の変化ベクトルの鉛直分力は,水平分力より位相が甚だしく遅れて変化する。これは柿岡では起らない現象である。下里でほ反対であって,鉛直分力は水平分力の変化より位相が進む。
鹿野山において,急鋭に始まる現象では,鉛直分力の発現時間が水平分力のそれより0.3分〜2分おくれる。ssc では約1.5分である。これは Duration が大きくなると大きな値となる。(第32図)これの原因は全く分らないが,興味ある問題であろう。また著者の定義したベクトルS(α=tan-1B/A,√A2+B2,鉛直分力下向きを正とした)とバーキンソンベクトレ(α=tan-1B/A,cot-1√A2+B2,鉛直分力上向きを正とした)との比較をした。直観的に観測所の特性を知るには後者がすぐれているが,詳しい議論や他の地球物理現象と変化ベクトルの関係を調べるのにはベクトルSの方がすぐれている。
永井正男
1958年7月8日の地磁気嵐と電離層嵐の発達について
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 199-232, 1966年12月
要旨
1958年7月8日07時48分世界時に起こった地磁気嵐は Fast Type の PCA に対応する。これに対しさきに解析した1958年2月11日の地磁気嵐は,Slow Type の PCA である。2月11日の場合は,PCA の発達過程と一致して Pre-sc 擾乱の発達過程をとらえることができた。7月8日の PCA の初期の発達過程においては地磁気の変化はほとんど静穏であり,ブラック・アクトの領域が完全に極冠帯および極光帯の全領域をおおった後初めてSharp Negative Bay が急発達した。これは2月11日の場合と非常に異なっており Fast Type の場合の特性の一つと考えられる。
sc の3時間前に DP(Pre-sc)電流系が極冠帯ブラック・アウトと関連してすでに形成されておるが,この電流系と初相のそれとは本質的に全く同じパターンを示している。これは2月11日の場合とよく一致する。したがって sc の二・三時間前から地磁気嵐の初相にいたる間においては Fast Type と Slow Type の区別はつけられない。
主相においては Dst 磁場の発達にともなって異常電離領域も著しく南下する。2月11日の場合は午前の側から真夜中にかけて極光帯ブラック・アウトがスパイラルにのび,午後の側から真夜中にかけて Storm Es の領域が発達するが,7月8日の場合は極光帯の全領域をおおってブラック・アウトだけが観測される。これほきわめて特異な例である。電流系は下部電離層における異常電離領域の発達と同様,初相のそれがさらに増大されたパターンを示すが,昼夜の区別がなくなり極光帯全域で極めて大きな値を示している。これは初相の電流系にさらに Auroral Electrojet が増大されて附加されたものと考えられる。
荒木健
地磁気3成分の地点差について
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 233-262, 1966年12月
要旨
地下の物理的な変化により,地上で観測される地磁気の値が変化することは,地震前後の磁気測量でしばしば報告されている。しかし地震の影響を地磁気の変化からとり出すことは,外部じよう乱の影響が大きいので困難である。適当な近い距離における地磁気の値の差には,外部じよう乱の影響は大差がないと思われ,地下の物理的変化の影響が見つけられる可能性がある。
この予備的調査として・太陽活動度の極小期である1964年の女満別・柿岡・鹿野山・鹿屋の永年変化分を差引いた日平均値を用いて各組合せによる地点差,(女満別−柿岡),(柿岡一鹿屋),(柿岡−鹿野山)を調らべ,各成分の地点差が地磁気活動度 −ここではKp指数の日合計値− に関係があり,地点間の距離が近くなると関係はなくなり,地点差の標準偏差は各成分各地点差で異なり,狽jpとの関係も一定でなく,地点間の距離との関係も水平分力をのぞいて分らないことを示した。
またじよう乱の影響を除くために半旬平均値が使われ,これで小さなじよう乱がかなり除かれ,標準偏差が地点間の距離に関係することをたしかめた。
久保木忠夫
車などによる人工擾乱
地磁気観測所要報, 第12巻, 第2号, pp. 263-292, 1966年12月
要旨
車は多量の鉄材により作られている。このため車が地磁気観測室の近くを通ると大きな人工擾乱磁場をつくる。この量はほぼ車の重量に比例する。一般に擾乱磁場の水平成分ほ大きく,鉛直分力ほそれの1/2〜1/5である。擾乱磁場の大いさは距離の-3乗に比例して減少する。そのおおよその量を,10mの距離のときの値に換算すると,大型バス・大型トラックでは150γ,乗用車・小型トラックでは60γ,オートバイ・小型耕運機などでは5γ,自転車などは2γである。
いづれの車の磁性も固有磁気と地磁気による誘導磁気とからなり両者の量はほぼ等しい。平均して車の磁気能率は,車の重量が300kgのとき5×10 4Γである。いわゆる鉄もこの程度の磁性をもっているので,一般的に云えば1mの距離で1γの磁場を作るのは30gの鉄材である。モーター,特殊な測定器などはさらに大きく,2〜5倍の磁性をもっている。したがって,磁性の強さの試験をしていない鉄材は,車の磁気能率の測定した結果(1m,1γは30gの鉄)の10倍の安全率を見込んで観測室から遠ざけた方がよい。
女満別・柿岡・鹿屋においては地磁気観測室は近くの道路を通る車により,人工擾乱磁場の影響をうけている。この量を0.5γ以下にするにほ,大型バス・トラックに対して70m,乗用車・小型トラックに対して50m,その他の小さい車に対して25m以内に観測室に近づけてはならない。
地磁気観測室は鉄筋を使用しない建物と30m以上離して建てられれば,相互の人工擾乱はないが,車が通行することを考えると少くとも50m,出来れば70m離すことが望ましい。鉄材を多量用いる建物などを建てるときは,特別に考慮する必要がある。
特殊な車や,測定器もその磁性が観測の障害にならないよう遠ざけなければならない。これについて2,3検討した。
これらの結果は地磁気観測所を新設したり,今後の運営に役立つことであろう。
Kakioka Magnetic Observatory
Geomagnetic Indices K and C for 1964 at Kakioka
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 12, No. 2, pp. 293-295, December, 1966