Yanagihara, K.
Periodic and Non-Periodic Components in Geomagnetic Secular Variation
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 15, No. 2, pp. 87-106, December, 1973
要旨
地磁気永年変化に周期数十年の周期的変化の含まれることは既に指摘されている。観測された永年変化から非周期的変化を引き去れば,この周期的変化が明らかに認められるが,その周期、振幅はしばしば誤まり定められやすい。それは真の非周期的変化を直接求め難いからである。観測値を直接時間の二次式(あるいは一次式)で近似することを考え最小二乗法を適用したのでは,正しい非周期項はえられない。したがってこのときえられる非周期項を引いた残りの周期的変化ももちろん正しくない。これらのことはすべて観測期間と周期とが同程度であるためにおこる。
正しくは,二乗誤差を最小にするという原則を,周期項と非周期項の和という関数について,限定された期間の観測値に対して適用すべきである。この方法について考究し,現実の永年変化を解析した。中緯度に均等に分布する10カ所の観測所の平均永年変化から水平分力と垂直分カの年変化率の周期項として,周期60年,振幅15〜16γ/yrがえられた。
Shiraki, M.
Variations of Focus Latitude and Intensity of Overhead Current System of Sq with the Solar Activity
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 15, No. 2, pp. 107-126, December, 1973
要旨
最初に,地磁気日変化等価電流の中心緯度を簡単に推定する方法について述べた。そして,この方法を用いて電流系の中心緯度が太陽活動に依存して変動するかどうか,太平洋西岸地域と北アメリカ地域の二つの地域について調べた。どちらの地域でも,電流系の中心緯度は冬に大きな変化がみられ,太陽活動の静かな期間には中心は高緯度にあり,太陽活動の活発な期間には中心は低緯度にある。春秋と夏の中心緯度の変化は小さく,夏には冬とはむしろ逆の変化を示す。この結果,電流系の中心緯度の季節変化は太陽活動の静かな期間と活発な期間では異った変化を示す。
電流系の中心緯度と同時に,電流系の強さを示す量が得られる。この量と太陽黒点数との関係にっいても調ぺた。これらの関係を示す係数mは,季節によっても,地域によっても異なっている。mの値が冬に最も大きいことは,電流系の中心緯度が冬に大きな変化を示すことと矛盾のない結果である。
Yasui, Y.
A Summary of Studies on Luminous Phenomena Accompanied with EarthQuakes
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 15, No. 2, pp. 127-140, December, 1973
要旨
「地震に伴って発現する発光現象」は古来より多く知られているが,その成因・機構共にいまだに不分明で,学者の中でも,これは何か他現象の誤認ではないかとする人がかなりある。
筆者は昭和36年の日向灘大地震,昭和41年〜43年の松代群発地震に伴った発光現象などについての調査報告を3回にわたって本誌上で発表したが,ここに総報として最終報告をする。
筆者は,強酸性岩地域ではフィンケルスタインとポーエル両氏による圧電気電場内に,地震により地下より揺り出された十分な量のエマナチオンが存在する時に発光現象が生ずるとする。しかしその発光体の本体は直後数十メートルの下半部接地半球上の白色あるいは青白色体であり,付近に雲霧の存在する時は,本体よりの反射光透過光により光が分散されるとして,発光現象の形や色の複雑多岐性が見られるものとした。
フィンケルスタイン,ポーエル氏の岩石圧電気の論文は日本ではまだひろくは紹介されていないようなので,本報告の末尾で同論文の大要を紹介させていただく。
白木正規, 田中靖章
鹿屋の地電流と海洋潮汐
地磁気観測所要報, 第15巻, 第2号, pp. 141-150, 1973年12月
要旨
地磁気の変化では,太陰日変化は,太陽日変化に比べて非常に小さい。この関係は,地磁気変化によって生じた地電流の日変化にも期待される。ところが,鹿屋(Kanoya;31°25′N,130°54′E)で観測された地電流の太陰日変化は太陽日変化よりも大きい。この原因として,海洋潮汐が原因で生じた地電流が考えられる。これが事実ならば,地電流の中に海洋潮汐に対応したスぺクトルのピークが見られるはずである。このことから,鹿屋の地電流のNS成分のスぺタトル構造を調べ,鹿屋の近くの検潮所の潮汐資料と比較してみた。検出されたスペクトルの大きさは,地磁気変化によって生じたことでは説明がつかないが,海洋潮汐が原因で生じたと考えると説明しやすい。このことから,鹿屋の地電流には,海洋潮汐が原因である変化が,太陰日変化ばかりでなく,太陽日変化にもかなり含まれているようである。
永井正男
1972年8月4日〜5日の磁気嵐について
地磁気観測所要報, 第15巻, 第2号, pp. 151-164, 1973年12月
要旨
1972年8月4〜5日の磁気嵐は次の点でたいへん特徴的であった。
1)柿岡では4日22時12分に219γのHの減少を示した。また22時57分にHの減少から45分おくれて210γの東偏のDの変化を観測した。いずれの変化も継続時間は5O〜60分であるが,このようにはげしい変化がsscのすぐあとにおこることは,柿岡のような中・低緯度の観測所では稀なことである。
2)上記の変化に対応して.昼側の極光帝とくにCollegeでは-1,500γ〜+2,500γのたいへんはげしい振動性の変動を示した。一方夜側の極光帝におけるSodankylaでは,最大-1,000γの割合巾広い変化を示したにすぎない。4日21時30分,22時10分,22時30分における電流系の変動は昼側の極光帯で歪曲がはなはだしく,時計廻りの領域と反時計廻りの領域が振動性の変動に呼応して,はげしく位置を変えているのがわかった。
3)5日14時00分のsscは、San Juan,Tucson,Fredericksburg 等のアメリカゾーンで僣が負を示し,通常のsscと様相が異なっている。これは時計廻りのDS(SC)の範囲が中・低緯度まで延びてきたためである。
5日15時10分の電流系は平行電流の向きが12時の方向を示し遅くなっているが,高緯度地方では通常のDS電流系と大差ない。しかし中・低緯度では広い範囲にわたって東向きの電流が卓越しているのがみられる。
一方5日15時30分の電流系は,ほとんど極光帯の全領域にわたって西向きの電流を示し,15時10分の電流系とだいぷ様相が異なっている。
4)以上の他,柿岡のような中・低緯度の観測所においてさえ,振巾の大きな活動的なPc5が観測された。これは1958年2月11日の大磁気嵐以来のことである。
柳原一夫
地磁気日変化における局地場
地磁気観測所要報, 第15巻, 第2号, pp. 165-173, 1973年12月
要旨
地磁気日変化の等価電流系中心附近におけるふるまいを垂直成分を考慮に入れて検討した。静穏日変化のH−Z 面ベクトル図を作り,その南北分布をみると全体の傾斜は中心経度で垂直になり,南北両側では傾斜が逆になるので中心緯度が容易に求められる。また一時間毎の水平等価電流ベクトルとZ成分値の観測点間分布を一時間に相当する経度15°づつずらして画き時間経過を追って分布図を作ると中心緯度附近のふるまいが一層明らかになる。水平等価電流ベクトル分布の渦中心とZ成分値の負中心とは一致して中心を示す。これらのベクトル図や分布図を冬季節平均日変化について求めたものを正常状態と考えると,個々の日では局部的にこの正常状態パターンから著しくずれたものを見出すことがある。これらは局地場あるいは時間的局所場と考えなければならないものである。その著しい例について検討する。