Shiraki, M.
Seasonal Variations of Focus Latitude and Intensity of Sq Current System
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 16, No. 1, pp. 1-10, December, 1974
要旨
西太平洋域(1958-1969),北アメリカ域(1948-1962)およびオーストラリア域(1949-1958)で,国際静穏日の水平成分(H)の資料を用いて,地磁気日変化等価電流系の中心緯度(φf)と電流系の強さの目安(|dγ1/dφ|)の季節変化について調べ,次のような点が明らかにされた。
(1)φfは太陽黒点数でわけたグループによって異った季節変化を示す。そして,この季節変化の違いは,冬のφfが太陽黒点数に依存して変化するためである。冬のφfは太陽活動が活発なときには低緯度にあり,静穏なときには高緯度にある。
(2)φfは春秋にも違いが見られる。春と秋のφfを比べたとき,南北両半球とも秋の方が低緯度にある。この現象は,どのグル−プにも見られ,太陽黒点数に依存しない。
(3)西太平洋域と北アメリカ域のφfの季節変化を比べると,季節変化の地域による違いも著しい。オーストラリア域はどちらかといえは西太平洋域に近い変化を示す。
(4)|dγ1/dφ|の季節変化は地域によって異なっている。また,それぞれの地域で,偏角のレンジの季節変化とも異っている。
Kuwashima, M.
Magnetic Pc5 Pulsations Associated with Periodical Particle Precipitation
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 16, No. 1, pp. 11-28, December, 1974
要旨
周期的な粒子降下が磁気脈動Pc5の発生に及ぼす効果の度合を,1968年の昭和基地(磁気緯度69.6°)の資料を使って調べた。その結果,Pc5の主原因は磁気流体波であっても,周期的な粒子降下は2次的効果としてPc5の発生に寄与しうることが明らかになった。
さらに,Pc5及び周期的粒子降下の主原因である磁気流体波の発生の起源として,サブストームを吟味する。
白木正規
地磁気日変化等価電流系の変動−10〜30日周期の変動−
地磁気観測所要報, 第16巻, 第1号, pp. 29-44, 1974年12月
要旨
西太平洋域における地磁気日変化の日々の変動の解析を行った。解析では,まず最初に,1970年12月から1972年2月までの1年3か月にわたって,地磁気日変化の等価電流系の中心緯度とその強さが,地磁気活動のきわめて大きい日を除いて毎日求められた。これらの日々の変動には,2〜3日周期の変化ばかりでなく,10〜30日周期の変化も含まれている。地磁気活動のかなり活発な日も含めて解析されたが,これらの変化は地磁気擾乱によるものではない。
次に,パワースペクトル解析の方法によって,10〜30日周期変化の卓越周期とその時間的な変化について調べた。等価電流系の中心緯度には,約33日,17日,10日および7日の周期のところにパワースペクトル密度のピークがみられるこ。また,電流系の強さには,約25日と14日の周期のところに卓越したピークがみられる。これらの卓越周期は,解析期間をとおして常にみられるものでなく,期間によって卓越周期は異なっている。
森俊雄
北海道東部における地磁気地電流変化観測
地磁気観測所要報, 第16巻, 第1号, pp. 45-58, 1974年12月
要旨
1970年より北海道東部地域の地下電気伝導度構造を求めるため,各地に臨時観測点を設け,地磁気・地電流の変化観測を行っている。地磁気変化観測にはGIT型磁力計およぴ自作の携帯式変化計を用い,地電流観測の電極には銅・硫酸銅電極または炭素棒電極を用い,記録にはペンレコーダを用いた。現在までに根釧原野を中心に約10点で観測し,解析を進めている。これまでた得られたバーキンソンベクトル分布及び地磁気変化と地電流変化との関係を述べる。
地磁気短周期変化より求めたバーキンソンベクトルは女満別から根室を結ぶ線上では,ほぼ東向であるが,太平洋岸を西へ行くに従って南から南西方向へと向きを変えていく。また堆積層の厚いと思われる根釧原野内陸部では鉛直分力の変化が非常に小さくなり,バーキンソンベクトルが除々に方向を変えていく。地電流の短周期変化については,太平洋岸に近い観測点は変化が非常に大きく,地磁気変化の方向が変ってもほとんど地電位差変化の方向が変らない,いわゆる地電流主方向が非常にはっきりしているが,根釧原野内陸部では変化振幅が小さく,主方向もはっきりしない。また,水平面内における地磁気変化方向と地電流変化方向との平均的ずれが,地質や重力異常と非常に対応が良いように思われる。
森俊雄, 水野喜昭, 長谷川一美
北海道東部における地震予知地磁気試験観測結果について
地磁気観測所要報, 第16巻, 第1号, pp. 59-68, 1974年12月
要旨
1973年6月17日根室半島南東沖約5Okmの地点にM=7.4の地震が発生した。これより先,地磁気観測所女満別観測施設では1971年に根室市厚床他2点に地磁気による地震予知研究のための磁気点を設置し,同年より年1回の絶対観測を行ってきた。1973年は地震直後にこれら3磁気点で絶対観測を行い,震源に一番近い厚床ではさらに1ケ月後及び4.5か月後に観測を行った。これら観測にはプロトン磁力計とGSI一等磁気儀を用いて,全磁力,偏角および伏角を夜間数時間観測した。この結果,全磁力,伏角,水平分力,鉛直分力には地震の影響と思われる値の変化は認められなかったが,厚床における地震3日後の偏角に約0.8′の異常な変化が認められた。磁気点の設置方法には特別の注意を払い,また観測も慎重に行なわれ,毎回精度の良い観測値が得られたので,厚床で得られた偏角の異常は地震の影響である可能性が強い。
今回の結果の一部は1973年6月17日根室半島沖地震調査報告で発表してる。
山口又新
地磁気変化計基線値の変動について−採用基線値決定法−
地磁気観測所要報, 第16巻, 第1号, pp. 69-77, 1974年12月
要旨
変化計の基線値は,週1〜2回の絶対観測によって求められ,毎日の基線値は,それらからいろいろの方法によって算出される。よく知られているように,観測基線値は変化計の温度により変動するばかりでなく,ドリフトもする。観測所所在地の気侯風土,観測室の構造などによっては,観測基線値の変動は,極めて複雑であり,これをもとにして毎日の基線値を求めるには,工夫が必要である。変化計の温度依存,ドリフトの物理的機構を明らかにする必要がある。
本稿では,重回帰分析法により,回帰式を求め,これによって毎日の基線値を算出することを検討した。かなり有効であるが,実用化するには,なお問題もあろう。又当然変化計が異なれば,回帰式も変ってくるが,説明変量はそれ程大きくはかわらないようである。変化計基線値変動に寄与する温度についても,今後調査の必要があろう。