Sano, Y.
Transfer Functions of Short-Period Geomagnetic Variations (0.3min. to 9.0min.) at Kakioka
Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 19, No. 1, pp. 1-14, March, 1981
要旨
柿岡におけるKasmmerシステムの毎秒計測値を用いた地磁気短周期(0.3min.〜9.Omin.)変化の変換函数実時間解析法およびその2,3の解析結果について報告する。
解析期間はJan.1977〜Mar.1979で,今回の解析結果で最っとも注目すべきことは,このような短周期変換函数の時間的変化の中に,顕著な長周期変動が認められたことである。この変化は短い周期成分の変換函数になるほど卓越するという明瞭な傾向があり,またこれらの時間変化特性はAuとBu変換函数で全く良い一致を示している。これらの変化は地震発生(活動度)や雨量とある程度の相閑性が見られ,また後述する地磁気活動度依存性とは無関係と考えられるので,それらは主として地球内部に起因する変化であると推定される。
しかしながら,今回の解析法には磁場計測の分解能が0.1nTでは十分ではないこと(地磁気短周期変化振幅は一般に小さい。),また有効な地磁気変化があるなしにかかわらずの実時間連続解析であるというようないろいろな問題があり,個々に求められた変換函数は極めて大きな誤差(バラッキ)を持っている。さらに,その誤差に依存したかなり大きな系統誤差も認められ,これはまた地磁気活動度依存性とも考えられるもので,有意な地下に原因する変換函数の同定はそれほど容易ではない。
この系統誤差(地磁気活動度依存性)はAuとBu変換函数でセンスが反対である。したがって,前述の変換函数の長期的変化は,少なくともこのような効果によるものではないと結論される。むろん,これらの変化の他に大きな短周期的変化も多く見られるが,それらについては外部要因・誤差要因によるものもかなり多いと考えられ,それらの判別はなかなか困難である。
佐野幸三, 仲谷清
柿岡といわきにおけるCA変換函数の同時比較
地磁気観測所要報, 第19巻, 第1号, pp. 15-26, 1981年3月
要旨
柿岡といわき(福島県)の2地点におけるJuly 1977よりMar.1978期間の変換函数の同時比較を行なった。変換函数の算出法は,個々の地磁気擾乱についてフーリェ解析を行ない,最小2乗法によるもので,両地点とも全く同じである。この同時比較の主な結果は次のとおりで,いろいろと興味ある重要な結果がえられた(今回はAu,Bu 実数部変換函数に関するもののみ)。
(1)両地点における変換函数の時間的変化は,非常に平行性のある特性を示している。
(2)これらの平行性のある時間変化は外部要因によるものなのか,内部要因によるものなのか確かなことは結論できない。
(3)柿岡といわきの変扱函数の一般的な周期特性も,かなり類似している(特にAuの場合)。
佐野幸三, 栗原忠雄
女満別・鹿屋におけるPi型地磁気脈動諸特性の統計的解析(T)
地磁気観測所要報, 第19巻, 第1号, pp. 27-45, 1981年3月
要旨
女満別・鹿屋における2 solar cycle(1958〜1979年期間)のPi型地磁気脈動の諸特佐について,統計的な解析を行った。解析に用いた資料は地磁気観測所が業務として定期的に報告している現象報告資料である。本報告でほPiー脈動の出現・周期・振幅等の永年変化特性を,それらの太陽活動度依存佐を中心にして解析した結果について述べる。
今回の解析結果からも,よく知られているPi-脈動の出現数と太陽活動度(黒点数)との逆相関性が明瞭に見い出された。Pi-脈動の周期特性についても,太陽活動度に依存した比較的明瞭な永年変化が見られる。他方,振幅特性については,前期 solar cycle ではある程度の太陽活動度に依存した変動が認められるものの,後期 solar cycle では様相が一変し,振幅増大の異常ドリフトが見られる。この異常ほ現象報告観測基準の変動(変更)に大部分が原因しているようである。前述の周期特性にも各 solar cycle で細部ではかなりの差異がある。この差異ほ自然現象の本質的な特性なのか,上述の脈動現象報告におけるQuality A,B,Cの観測基準の変動によるものかはっきりしない。なお,地磁気活動度(Kp)は両 solar cycle で全く異なった様相(後期 solar cycle でほ太暢活動度との相関性が大幅に乱れている。)を示している。