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第26巻 第2号 (1998年)



大和田毅, 徳本哲男, 山田雄二, 小嶋美都子, 熊坂信之, 横山恵美, 菅原政志, 小池捷春, 清水幸弘

新システム:地磁気変化量観測装置の概要

地磁気観測所要報, 第26巻, 第2号, pp. 1-14, 1998年3月


要旨

 地磁気観測所では,1995年〜1996年の2年間に,女満別・鹿屋両観測施設において地磁気変化観測装置(吊り磁石式変化計)と地磁気変化度観測装置(誘導磁力計)の機能を統合して新たに地磁気変化量観測装置を製作し運用を開始した.新装置は,地磁気の検出部に短周期変化から長周期変化まで高い精度で計測できる高感度フラックスゲート磁力計を採用するとともに,全てのデータをデジタル化した.このシステムでは,1台のフラックスゲート磁力計から0.1秒値および1秒値を取得し,また,1分値,1時間値は,この1秒値を用いて,平均処理,補正処理を経て作成される.柿岡においては,既に1秒値が収録されていたが,さらに短周期の変化についても,地磁気変化度観測装置(誘導磁力計)に代わって,既存の高感度フラックスゲート磁力計を改造することで,観測施設と同様に0.1秒値を収録できる地磁気変化量観測装置を整備した.このように,柿岡,女満別,鹿屋において,1秒値,0.1秒値のデジタルデータを取得する観測システムが完成したことによって,データの高度な利用が可能となった.




Yamazaki, A., Tokumoto, T.

Geomagnetic three components measurement with Overhauser magnetometer

Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 22, No. 2, pp. 15-24, March, 1998


要旨

 1989年から1992年にかけてのKASMMERの更新に際し、筆者らはオーバーハウザー磁力計を用いて地磁気3成分を測定する技術開発を行った。オーバーハウザー磁力計を成分観測に適用するためにはセンサーの改造が必要であり、また補償コイルにファンスロー・ブラウンベックコイルを用いた。また、D成分では新たに考案した測定方式を採用した。本文では測定方法の詳細と誤差解析、および基線値の安定性について述べる。




Ozima, M.

Geoelectric Characteristics of Mito, Kakioka, Aizu and Numazu Regions Revealed by the Analysis of the Geoelectric Field Variations with BAYTAP-G -an evaluation of BAYTAP-G as a means of ananalysis of the geoelectric field-

Memoirs of Kakioka Magnetic Observatory, Vol. 26, No. 2, pp. 25-47, March, 1998


要旨

 BAYTAP-Gを用いて,水戸,柿岡,会津,沼津地域の地電位変動データを解析した.柿岡以外のデータはすべて,NTTの施設を利用した超長基線観測値である.解析した4地域の地電流データ,参照観測値として用いた柿岡地磁気観測所の地磁気のデータとも,毎時平均値を用いて月毎(N=744)に解析を行った.BAYTAP-Gを用いると,地電流の変動は,地磁気変動による誘導成分,潮汐成分,ゆっくりした変動(トレンド),残差(irregular component)の4成分に分解することが出来るが,これまでは主として,いかに効率よく4成分の分解が出来るか,いかにして効率よく微小な地電流の異常変化を検出出来るかについて検討し,それらについての結果はすでにいくつかの論文にして発表済みである.当論文においては,BAYTAP-Gによる解析の結果得られる,誘導成分のamplitude factor,潮汐成分の振幅,及び最低ABIC値に着目し,この解析により何が判るか,問題点として何が残るか等を検討した.周期別誘導成分のamplitude factor(振幅係数)から求めた各地域の見かけ比抵抗の値は,水戸・柿岡・沼津の3地域と会津地域との間で大きなコントラストを示した.潮汐成分の振幅も,見かけ比抵抗値でみられたと同じ地域差を示した.各解析期間(1ヶ月)中の最低ABIC値は,その期間の地磁気活動度に非常に良く対応していることを改めて示した.このことは,ここで用いた方法では,特に,地磁気の荒れた期間には,誘導成分を完全には分離することが出来ないことを示唆している.また,地磁気誘導成分を計算する際に,地磁気X−,Y−成分の他に,Z−成分も用いると,最低ABIC値は,冬季にはかなり下がるが,夏期においては,Z−成分の使用の影響はほとんど最低ABIC値には現れない.このような,地電流の地磁気変動による誘導成分への,地磁気Z−成分の役割の季節変化は,共通して用いた柿岡における地磁気変動そのものの特性によるものであろうと考えられるが,実際に何故この様な季節変化が起きるかについて明確な説明はできなかった.更に,最低ABIC値は,参照観測値の地磁気の値として,過去の値と共に,未来の値(advanced associated data)をも用いることにより,劇的に低下することが判明した.

付記:当論文原稿は,筆者が調査課に所属していた1991年にはほぼ骨格ができあがっていたが,その後筆者が観測課を経て技術課に所属するに従い,余裕がなくなり未完のまま放置されていた.また,誘導成分への地磁気Z−成分変動の役割の季節変化を物理的に明快に説明することが出来なかったことも,放置された原因の一つである.しかし,この様な現象が存在することは事実として認めざるを得ない.1996年より当所が淡路島で観測している電磁気データの,BAYTAP-Gを用いた解析の着手に際し,これまでに筆者が水戸地域等の地電流データのBAYTAP-Gを用いた解析の結果得た知見を埋もれさせずに,未解決の問題は問題として,論文として残しておくべきであろうと考え,筆者の定年退職前に,とりあえずまとめたものである.




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