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平成29年度地磁気観測所調査研究計画一覧


重要課題

(1)観測業務の遂行に関する調査研究の課題

ア.地磁気短周期現象の特徴と情報活用に関わる調査(平成28〜29年度)

[担当者]:

○平原秀行、森永健司、秋元良太郎、佐々木敬悟(観測課)、大川隆志、山崎貴之、吉村純、笹岡雅宏、海東恵美、吉武由紀(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 極端な磁気嵐現象は、発生頻度は低いが一旦発生すると高エネルギー粒子や地磁気誘導電流による災害を引き起こし、電力インフラ、衛星運用、航空運輸などに大きな影響を与えることが議論されているが、このような地磁気極端現象の事例は少なく、人間活動に対する影響評価が十分になされているとはいえない。
 これまで、地磁気急変化現象の統計的調査による極端な磁場変動の推定や周波数解析を用いた巨大磁気嵐に対応する地磁気誘導電流の推定を試みるとともに、地磁気短周期現象によって懸念される日常生活への影響への対応の一助となるよう、速やかな地磁気活動状況の提供や現象カタログの品質向上を推進してきた。
 今後さらに、地磁気短周期現象の検出能力向上やデータベースを充実させることで利便性を向上させ、観測データの利用価値を高めていく。また、地磁気観測所で保有している長期間にわたる地磁気及び地電流の変化観測データを用いて太陽活動と地磁気の変動が与える影響評価に資する可能性を探求する。


イ.地磁気絶対観測の自動計測試作器の試験及び評価(平成27〜29年度)

[担当者]:

○大和田毅、熊坂信之(観測課)、山崎貴之、海東恵美、吉村純、仰木淳平、大川隆志(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気絶対観測の自動化に係わる調査研究で、平成26年度に偏角測定部の一部の試作器を製作し、偏角の試験観測を実施した。試験観測で得られたデータから、磁場測定を行うフラックスゲート磁力計検出器、水平回転台の傾きを測定する傾斜計それぞれの取付状態の良否が重要であることなどが判明し、今後のプロトタイプの開発に向けた問題点について検討した。
 本研究課題では、偏角測定部の改良と伏角測定部及びレーザー光を用いた水平角度校正装置(偏角測定データを真北からの角度に変換する)の装着と試験観測を進め、また、海外で開発を進めている装置の仕様も視野に入れながら、プロトタイプの改良・評価を目標とする。


(2)観測成果・技術の利活用に関する調査研究の課題

ア.電磁気による火山活動評価の高度化に関する調査(平成29〜31年度)

[担当者]:

○山崎明、山崎貴之、高橋幸祐、増子徳道、仰木淳平(技術課)、豊留修一、山際龍太郎、島村哲也、田中達朗、長町信吾、秋元良太郎、栗原正宜(観測課)、有田真(網走地磁気観測連絡事務所)、北川貞之

[概要及び具体的な達成目標]:

 御嶽山の噴火災害によって水蒸気噴火への社会的関心が高まり、気象庁地震火山部では水蒸気噴火の予知を目的として火口周辺での火山観測体制を強化してきた。そのなかで地磁気全磁力は火山の地下浅所に存在する熱水活動を把握するのに優れており、水蒸気噴火の予知に貢献することが期待され、強化する観測項目の一つとなった。平成27年度以降、順次樽前山、吾妻山、霧島山、御嶽山、九重山に全磁力観測装置が整備され、平成29年度は安達太良山に整備予定である(以下、6火山)。このように地磁気全磁力観測は火山監視業務に取り入れられ、火山監視のための主要な観測の一つになりつつある。しかしながら、地磁気変化には外部磁場擾乱、人工擾乱、地表の岩石磁化の変化に伴う年周変化などが含まれ、火山性の磁場変化を評価するためにはこれら火山活動起源以外の磁場変化の分離に経験豊富な専門家の判断が必要な現状であり、地磁気全磁力観測による火山監視の業務化を円滑に実現するには火山性磁場変化を適切に抽出する手法を開発し、専門家でなくとも評価できるようなシステムの構築が求められる。本調査研究では整備された全磁力観測点の特性調査を基にDI補正や年周変化の補正手法について開発を行い、6火山のデータ処理手法に適用させ、また、火山課および各地域火山監視・警報センターと地磁気データを共有し、火山現業において地磁気データを簡便に利用できる環境の構築を目指す。さらに、6火山の火山性磁場変化を解析し、熱活動等の評価を行う。
 また、当所がこれまで取り組んできた雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、伊豆大島における全磁力連続観測を継続し、火山活動と全磁力変化の対応関係について引き続き調査をおこなう。加えて面的な全磁力変化の分布を把握するため、年一回の全磁力繰り返し観測も実施する。これまでの調査により雌阿寒岳や草津白根山では、全磁力の観測により火山地下の熱活動についてモニタリングが可能であることが示された。特に雌阿寒岳では火山性の磁場変化を高感度で捉えることに成功しており、全磁力観測が火山活動の監視に有効であることを示した典型的な事例であるいえる。一方でDI効果やCA効果の補正手法、火山島における海洋ダイナモ効果の影響評価など火山性磁場変化を高精度で検出のために取り組むべき課題も残されている。本調査研究ではさらなる事例研究を積み重ねることにより、火山性磁場変化の検出技術の高度化を図る。なお、これら各火山での全磁力観測の観測結果および解析結果について火山活動解説資料や火山噴火予知連絡会等に提供する。
 最近、大学などで無人ヘリやドローンなどを利用した空中磁気測量による全磁力の繰り返し観測が試みられている。空中磁気測量は面的な観測ができることや、火山活動が活発化して人が近づけなくなっても観測が行えることなど有利な点があり、将来全磁力の繰り返し観測は空中磁気測量に置き替わる可能性もある。このような情勢を踏まえて、ドローン等を利用した空中磁気測量について文献等を調査し、情報を収集する。
 その他、火山における比抵抗構造探査や自然電位など全磁力以外の電磁気観測についても他機関と共同して実施する。


イ.地磁気ブロマイド記録のデジタル化(平成29年度)

[担当者]:

○吉村純、笹岡雅宏、海東恵美、吉武由紀、増子徳道(技術課)、山際龍太郎、平原秀行、澤田正弘、熊本真理子、森永健司、島村哲也、田中達朗、長町信吾、佐々木敬悟、秋元良太郎、栗原正宜(観測課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 100年を超える歴史を持つ地磁気観測所においてもデジタル値として観測されたデータは約40年に過ぎず、多くはブロマイド印画紙のアナログ記録として大量に蓄積されている。これらをデジタルデータ化して公開することで、データアクセス性の向上、現象等の検索・閲覧、データ比較、解析計算などその価値は飛躍的に高められる。過去のアナログ記録をデジタル変換し、近年のデジタル計測されたデータと繋げることで、連続した長期間の記録が扱えることにもなる。
 平成28年度までに、地磁気ブロマイド記録をデジタルデータに変換する手法の開発と、過去のブロマイド記録を数値化したデータ(柿岡1956〜1983年、女満別・鹿屋1980〜1984年)、ブロマイド印画紙の画像データ(柿岡1926〜1983年、女満別・鹿屋1977〜1984年)の公開を行ってきた。
 平成29年度は、外部資金を利用してブロマイド記録の画像データ作成をさらに進めるとともに、ブロマイド記録の数値化作業も進めていく。数値化したデジタルデータおよび得られた画像データは当所ウェブサイトで公開する。


基礎課題

ア.南極昭和基地の地磁気データの品質及び基線値安定性についての調査(平成29〜30年度)

[担当者]:

○仰木淳平、高橋幸祐(技術課)、平原秀行(観測課)、有田真(網走地磁気観測連絡事務所)

[概要及び具体的な達成目標]:

 昭和基地では、フラックスゲート磁力計(島津製作所MB162)を使って地磁気3成分の連続観測を、FT型磁気儀(Bartington)とプロトン磁力計(テラテクニカPM218SB)を使って月に1回程度の絶対観測を行っている。基線値の長期プロットで夏季に大きな変化が見られたため、2011年11月〜2012年1月にMB162センサー付属の水管で傾斜を断続的に測定したところ、南北・東西方向共に30″程度の変化が確認された。この傾斜変化が基線値へ与える影響を定量的に把握するため、2013年1月〜2月および2013年11月〜2014年2月にMB162センサーへ電子式水管傾斜計を取り付け、磁力計センサーの傾斜・温度を連続観測した。その結果、夏季の傾斜変化を確認すると共に基線値変化との対応を解析し、基線値変化の一部分は傾斜変化によるものであることが分かった。冬季および季節の変わり目まで含めた傾斜変化を調べるため、2015年2月以降、同電子式水管傾斜計での通年連続観測を行っている。また、MB162の安定性や今後のオーバーハウザー磁力計の導入可能性とその効果について調査するため、2016年12月にオーバーハウザー磁力計を設置し、全磁力値の毎秒連続観測を行っている。
 本調査研究では、観測システム及び観測環境のノイズ状態の調査により地磁気データの品質を把握することと、フラックスゲート磁力計での観測値を絶対値化した場合の精度(基線値の安定性)を把握することにより、昭和基地の地磁気データをより付加価値の高いものにすることを目的とする。


イ.雌阿寒岳で発生した水蒸気噴火の前兆現象に関する研究(平成29年度)

[担当者]:

○高橋幸祐(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気観測所は近年、水蒸気噴火を繰り返す雌阿寒岳ポンマチネシリ火口地下の熱的活動の推移を調査するため、全磁力連続観測を火口南側で2003年以降実施している。2008年11月には2度の噴火がポンマチネシリ火口南東部で発生したが、最初の噴火のおよそ2日前から噴火の前兆現象と考えられる全磁力変動を全磁力連続観測点で検知した(橋本ほか、2009)。
 全磁力連続観測データをFujii and Kanda (2008)の手法を用いて再解析した結果、この全磁力変動は16日0時(UT)付近から始まり、2日間で約2 nT減少したことを明らかにした。さらに、全磁力変動の開始時刻とAoyama and Oshima (2015)によって観測された傾斜変動の観測時刻がほぼ一致することもわかった。
 この全磁力変動が発生した原因としては、火口地下における急速な熱消磁の発生、応力場の変化に伴う圧磁気現象が考えられる。今年度の主たる目標として、圧磁気効果モデルによって全磁力変動の説明ができるかについて調査する。
 また、本研究で調査対象としている全磁力変動の発生メカニズムの調査では、熱水流動シミュレーションが有効であると考えられる。そこで米国地質調査所(USGS)が公開しているシミュレータ「HYDROTHERM」の有効性について試験を行う。シミュレーションでは火山体内部の岩石の空隙率(含水率)が熱輸送および間隙圧のじょう乱をコントロールする重要なパラメータの1つである。AMT観測によって推定された比抵抗分布は含水率や空隙率の分布の情報を持つ可能性があるので、比抵抗分布を利用した熱水流動シミュレーションの手法についても調査を行う。


ウ.観測情報データベースの構築(平成29年度)

[担当者]:

○吉武由紀、海東恵美(技術課)、森永健司(観測課)、有田真(網走地磁気観測連絡事務所)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気観測所の観測情報データベースを、現在まで情報を追加する形で継続してきたが、現在の管理方法が情報の羅列になっているため、即座に必要な情報を抽出することが難しく実用性に乏しい。
 本研究課題では、当所が管理している測器や観測点について再調査し、観測点・測器履歴の正確な把握、更新・整備状況への活用を目指し、観測情報資料をWEBデータベースで構築し、所内に公開して利便性を高め、業務の効率化を図る。


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