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ホーム > 調査研究 > 平成29年度地磁気観測所調査研究基本方針

平成29年度地磁気観測所調査研究業務基本方針


I.地磁気観測所の調査研究が果たすべき役割

1.施策目標との関連

 地磁気観測所は、その施策目標として、地球電磁気的手法による地球環境の監視と防災業務への貢献を掲げることとし、このための手段として、
  (1) 地球電磁気的手法による地球環境の観測の的確な遂行
  (2) 観測データ並びに当所の保有する技術の適切な公開
 を実施するとともに、
  (3) 地球環境監視並びに防災業務へ観測の成果を高度に利活用するための手法の開発
 を推進することとする。
 当所における調査研究業務は、これらの業務を高度化し、より的確に実施するために行うものである。

2.本年度の目標

 極端な磁気嵐現象は、発生頻度は低いが一旦発生すると高エネルギー粒子や地磁気誘導電流(Geomagnetically Induced Current, GIC)による災害を引き起こし、電力、GPS等衛星測位システム、航空運輸などに大きな影響を与える。地磁気観測所では長期間にわたり地磁気及び地電位差の変化観測データを蓄積しており、これらのデータを用いて太陽活動と地磁気の変動が与える影響評価のための調査研究に取り組む。
 過去のアナログ記録(印画紙)を調査研究に利活用するために、順次対話型半自動読み取りプログラムによりデジタル化を進める。これにより、変動の激しい巨大磁気嵐の研究に必要な高い時間分解能のデータが得られ、これらのデータの公開も進める。
 地磁気観測は連続観測とそれを較正するための間欠的な絶対観測から成り立っている。連続観測は自動化されているが、絶対観測は手動で行っているのが現状である。この絶対観測の自動化を目指し、自動絶対観測装置の試作器の試験・評価を実施し導入のための技術的検討を行う。
 国民の安全・安心に直結する火山活動の監視に関して、地磁気全磁力観測による火山活動評価に一定の成果が認められている。気象庁火山監視・警報センターおよび各地域火山監視・警報センターの業務に全磁力繰返し観測の項目が入り、全磁力連続観測の整備も進んでいることや最近の無人航空機や磁力計の開発状況等を踏まえ、より高度な火山活動監視のために水蒸気噴火について重点的に調査研究を進める。


II.重点的に推進すべき調査研究課題

1. 観測業務の遂行に関する調査研究の課題

1.1 地磁気観測

○ 施策目的

 大規模な磁気嵐が発生した場合は、それに伴う地磁気誘導電流が現代の高度情報化社会を支えるシステムに致命的な影響を与える可能性がある。しかし、このような地磁気極端現象の事例は少なく人間活動に対する影響評価が十分になされているとは言えない。地磁気観測所では長期間にわたり地磁気及び地電位差の変化観測データを蓄積しており、これらのデータを用いて太陽活動と地磁気の変動が与える影響評価のための調査研究に取り組む。
 また、地磁気短周期現象の検出能力の向上やデータベースの品質向上を図り、観測データの利用価値を高める。

○ 調査研究への取り組み

 これまで地磁気現象データベースの利用性向上と地磁気活動状況の即時提供方法の開発を進めてきた。また、地磁気短周期現象の統計的調査や周波数解析を用いて現象検出の精度向上や大規模な磁気嵐に対応するGICの推定を試みてきた。
 さらに高度情報化社会に与える影響を評価するために、大規模な磁気嵐について系統的な特徴を見出す試みとして、磁気嵐を規模別に分類して地磁気変動と地電位差変動の比較解析を進める。
 また、地磁気短周期現象のクオリティ(明瞭度、顕著さ)の基準を明確にし、データベースの品質向上を図るとともに、地磁気短周期現象の早期把握に向けた調査研究にも取り組む。

 [推進すべき重要課題:「地磁気短周期現象の特徴と情報活用に関わる調査」]

1.2 地磁気絶対観測

○ 施策目的

 地磁気観測は連続観測とそれを較正する間欠的な絶対観測から成り立っている。連続観測については遠隔操作を含めて自動計測、収録が実現しているが、絶対観測については自動測器による定常的な計測は未だ実現していない。しかし、現在の地磁気絶対観測で広く用いられている角度測定器やFT型磁気儀が将来にわたって供給されるのかなど不確実な要素もあり、今後の地磁気絶対観測の測器についての検討は避けて通れない課題である。また、地磁気絶対観測の自動計測は地磁気観測所の業務の効率化を図るものであり、現在の技術動向を探求しながら自動化に関する調査、検討を進める必要がある。

○ 調査研究への取り組み

 地磁気絶対観測の自動計測手法について、当所ではこれまで現状の絶対観測の手法を準用した偏角(declination)、伏角 (inclination) 測定の方法(DI 方式)と、可動式のコイルと磁力計を組み合わせる方法(ベクトルプロトン方式)を検討してきた。
 DI 方式については、現時点で実用化には至っていないが、海外で自動絶対観測装置の試作・試験が行われ、国内においても測器の開発が始まっている。一方、ベクトルプロトン方式については、平成23年度までの当所における調査により、これまで難しいとされていた偏角についても絶対観測値の計測が可能であることが示されたが、試作器の作成は困難である。
 調査の重点をDI方式に置き、海外で開発を進めている装置の仕様も視野に入れながら、自動絶対観測装置の試作器の試験・評価を実施し導入のための技術的検討を行う。

 [推進すべき重要課題:「地磁気絶対観測の自動計測試作器の試験及び評価」]


2. 観測成果・技術の利活用に関する調査研究の課題

2.1 火山活動関連

○ 施策目的

 地磁気全磁力観測による火山活動評価には一定の成果が認められており、気象庁火山監視・警報センターおよび各地域火山監視・警報センター業務に繰返し観測が取り入れられ、当所の全磁力連続及び繰返し観測結果も同センターの火山活動評価に利用されている。
 平成26年11月の「御嶽山の噴火災害を踏まえた活火山の観測体制の強化に関する緊急提言」では観測強化の大きな柱として地球電磁気観測が提言された。また、平成27年3月の「御嶽山の噴火災害を踏まえた活火山の観測体制の強化に関する報告」では、当所の役割として、気象庁が今後取り組む火山観測体制および評価体制の強化、または観測機器の開発等に協力していくことが求められている。こうした要請の下、当所は火山監視技術の高度化を目指し、電磁気学的な観点から気象庁の火山業務へ貢献していく。
 当所はこれまでの観測を通じて、阿蘇山・雲仙岳・三宅島・伊豆大島・草津白根山・吾妻山・雌阿寒岳・安達太良山など、火口周辺での全磁力観測が熱活動の理解に有効であることを示してきた。特に平成27年3月以降の雌阿寒岳の全磁力減少は、地震動など他の観測項目では捕捉できない小規模な熱活動における全磁力観測の感度の高さを示した。今後は、気象庁や大学などの研究機関と協力し、マグマや熱水活動の状態を詳細に把握する技術開発を目指す。
 また、無人航空機の開発と磁力計の軽量化が進み、磁気測量の有効な手段となり得るなど、新しい観測技術の開発を目指す。

○ 調査研究への取り組み

 気象庁火山監視・警報センターおよび各地域火山監視・警報センターとの協力を推進し、より高度な火山活動監視の実現を目指すため、特に水蒸気噴火について重点的に調査研究を推進する。雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、伊豆大島において全磁力連続観測を継続し、全磁力繰返し観測も行う。特に雌阿寒岳では平成27年3月以降、熱消磁とみられる全磁力変化が観測されており、平成28年5月以降は停滞しているが今後の推移を注視すると共に熱源の解析に力点を置く。平成27年度以降に地震火山部が整備した樽前山、吾妻山、御嶽山、霧島山、九重山等の全磁力連続観測点については、観測データの品質を見極めるとともに、外部磁場擾乱や年周変化の補正方法についての検討を行う。また、ドローン等を用いた空中磁気測量など新しい観測技術に関する調査や地殻比抵抗等の調査を行う。

 [推進すべき重要課題:「電磁気による火山活動評価の高度化に関する調査」]

2.2 観測データの公開関連

○ 施策目的

 観測成果の公表について、近年、ホームページを利用した手段が極めて重要なツールとなっている。速報的な情報発信から過去に蓄積された資料の閲覧まで、その利便性は格段に向上してきた。
 資料や情報をこの通信環境に取り込むためにはデジタル化する必要がある。しかし、100年を超える歴史を持つ当所柿岡においてもデジタル値として観測されたデータは40年余に過ぎず、多くはブロマイド印画紙のアナログ記録として大量に蓄積されている。これらをデジタルデータ化して公開することで、データアクセス性の向上、現象等の検索・閲覧、データ比較、解析計算などその利用価値は飛躍的に高められる。過去のアナログ記録をデジタル変換し、近年のデジタル計測されたデータと繋げることで、同一地点での連続した長期間記録が扱えることにもなる。過去のアナログ記録を有効利用するためには、これらを高品質なデジタルデータに変換することが不可欠である。

○ 調査研究への取り組み

 平成20年度以降、アナログ記録画像からデジタル化するためプログラム開発などが始められた。その後も、既存データと比較するなどして読み取りが充分な精度で行われていることを確認しつつ改良を重ね、毎分値および高時間分解能の7.5秒値への数値化を進めてきた。これまでの実績として柿岡の1956年から1975年までの毎分値と1956年から1984年までの7.5秒値、および女満別・鹿屋の1980年から1984年までの毎分値と、7.5秒値を当所ホームページで公開することが出来た。
 しかしながら、ブロマイド記録には年代を遡るほどに記録線の不明瞭なものやコントラストの良くないもの、記録形式が異なるものなどが次第に多くなる傾向がみられる。さらに基線値や寸法値を適用しても観測室によって原因不明の違いが残るなどの問題があることが分かってきた。これらについてはさらに調査を行うとともに、残っているブロマイド記録のデジタル化も順次、進めていく。一方、スキャンした画像ファイルも引き続きホームページでの公開を進めていく。
 なお、大学のデータベース作成共同研究などを利用しアナログ記録の画像ファイル変換を効率的にデジタル化が実施できるように努める。

 [推進すべき重要課題:「地磁気ブロマイド記録のデジタル化」]


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