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研究代表者:笹岡雅宏
地磁気観測所では地殻変動や地震活動等の地殻活動と地磁気の変化との関連を調査する目的で、東京大学地震研究所(以下、地震研)と連携し伊豆半島東部で地磁気全磁力観測を行っている(図1)。2009年12月から2010年1月にかけて伊豆東部で発生した群発地震の際には、地磁気全磁力の変化が見られたことが地震研の先行研究で報告されている。この事例のようにマグマ貫入に伴う火山性の群発地震の場合は、岩石の持つ磁気の強さが岩石の温度や応力に応じて増減するため地磁気が変化する。伊豆東部は市街地からの生活ノイズが大きいため、地磁気全磁力変化の検出手法の高度化を同時に推進することが重要である。本文では、伊豆東部の全磁力変化を検出する手法と2011年の結果を簡単に紹介する。
まず、生活ノイズの影響を避けるために夜間0〜4時までの1日平均を求めた。地震研の調査では夜間2〜4時までの時間帯が適当とのことであったのでこれと比較した。更に、太陽活動起源の外部変動磁場を除くための柿岡データを参照するDI補正の手法を改良した。改良のポイントは、外部変動磁場成分の推定のために内部固有磁場に相当する基準に、Dst指数の導出の際に用いられる過去5年間の静穏日から推定したベースラインを採用し、標準的手法より確度の高い補正を目指したことである。
当所観測点と地震研観測点について柿岡基準の全磁力差を図2に示す。図2aは夜間0〜4時までの1日平均についてのDI補正前後の比較であり、図2bは夜間2〜4時までの1日平均についてである。夜間2〜4時の1日平均の方がノイズは低減され、当所と地震研との全磁力変動が比較しやすくなった。潮汐による15日の周期変動を無視してトレンドを見るためにDI補正後に15日移動平均を求めた。図2bから、当所観測点は7月から8月にかけては地震研よりやや増加傾向であるが、ともに9月から10月にかけて減少傾向を示し、11月頭で底を打って増加に転じた。この間地震研の方が減少の傾向はやや大きい。2011年の群発地震と本全磁力観測との関連は必ずしも明確ではないが、この地域の狭い範囲での2観測点の全磁力変化に共通点と相違点が見出せたことは興味深く、今後とも地震研の観測網と一体的に調査を進める。
図1 伊豆半島東部における地磁気観測所観測点と東に1km強離れた東京大学地震研究所観測点の各位置と2011年の震央分布
図2 2011年の柿岡基準の全磁力差。(a)0〜4時までの1日平均、(b) 2〜4時までの1日平均の結果 :DI補正の前(黒線)と後(赤線)、補正後の15日移動平均(青線)