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研究代表者:藤井 郁子
火山における全磁力観測での解析及びその評価を行うために、カルマンフィルターを用いて地磁気データから局所的な長周期変動を抽出するプログラム(Fujii & Kanda, 2008)を改良し、ロバスト機能を導入しました。
異常値が発生した後すぐに元のレベルに戻るものをスパイク状異常、すぐには元のレベルにもどらないものをステップ状異常とし、スパイク状異常は残差振幅の異常から検出します(図1)。ステップ状異常はあらかじめ異常が起こった時刻を与えて、その時刻でトレンドの滑らかさの拘束をはずし、トレンドの飛びの振幅を求めるアルゴリズムになっています。解が収束するまで繰り返し計算を行い、大きな振幅から小さな振幅まで、異常値を検出するようにしています。
図1 阿蘇山上観測点での全磁力1時間値(青線)を鹿屋の地磁気XYZ成分を参照してロバストカルマンフィルターで解析したもの(赤線)との比較。青線と赤線が一致していないところが、検出された異常値。
また、カルマンフィルターのスムージングを選択できるようにし、長期の欠測やステップ状異常の振幅の予測精度を向上しました。スムージングにより、未来の値の予測機能も使えるようになりました。
改良したプログラムはLinux, Unixのいくつかのプラットフォームで動作することを確認しました。イタレーションを導入したことから計算回数が激増したため、効率的な行列計算法を採用して1回の計算スピードを約3倍に上げることで、計算時間を実用的な範囲に収めています。
人工データと実観測データを用いたテストを行い、小さなバグの直しを行い、新しく導入したロバスト機能に関して基本的な動作については確認できました。近傍に優良な参照点が確保できる場合は、特に問題なく動作すると考えられます。
浮上した問題点は、観測点と参照点の間に(1)永年変化の差がある場合と(2)短周期変動が短い線形フィルターで表現しきれない場合です。(1)ではトレンド成分に永年変化の差が含まれ、(2)では残差またはトレンド成分に超高層起源の短周期変動の一部が含まれます。関東は永年変化・超高層変化の波長が短い傾向にあり、柿岡を参照点として百数十km離れた火山(草津白根山、三宅島など)の解析をするとき、これらの問題が顕在化することがわかりました。
現在、これらの問題点の解決に向けて、いくつかの方法を試行しています。