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平成28年度調査研究のトピックス(5)

南極昭和基地における基線値変動と傾斜変動に関する調査

研究代表者:仰木 淳平

南極昭和基地(国立極地研究所)での地磁気の観測は、第1次観測隊の1960年1月に始まり、1966年から継続的に観測が行われています。南極地域の地磁気観測点はまばらにしかなく、その中でも昭和基地は長期的に観測を継続している重要な観測点です。気象庁地磁気観測所は、隊員派遣前の観測実習や地磁気観測についての助言等の技術協力を行うとともに、数年ごとに観測隊員として実際に観測を行っています。

現在、昭和基地ではフラックスゲート磁力計を用いて地磁気の変化を連続的に観測しています。また、地磁気の向きと大きさを観測する地磁気絶対観測を、おおむね月に1度の頻度で行っています(図1)。フラックスゲート磁力計で観測される地磁気変化には、磁力計の温度変化や設置場所の地盤の傾斜等による変動成分も含まれます。したがって、正確な地磁気変化を得るためには地磁気絶対観測による較正が必要です。地磁気絶対観測によって得られた較正値を「基線値」と呼びます。昭和基地では夏季に基線値の大きな変動がみられ、地磁気変化データの正確な較正の障害となっています。これまでの調査の結果、夏季に見られる大きな基線値変動の主な原因は、磁力計センサーの設置場所の地盤の傾斜である可能性が高いことが分かってきました。そこで磁力計センサーに傾斜センサーを設置し、年間の傾斜変動と基線値変動の関係を調査しています。

一年間の磁力計センサーの傾斜と温度の変動を図2に示します。夏季に顕著な傾斜変動があることが確かめられました。データを解析した結果、定量的にも基線値の変動の一部はこの傾斜の変動で説明できることが分かりました。一方、冬季にはこのような傾斜変動は見られないことも確認できました。また冬季の終わりから夏季にかけてセンサー温度の日周期変動が大きくなっています。これは日射による温度変化です。磁力計の出力も温度に影響を受けることが知られていて、できるだけ温度変化が少ない方が正確な観測ができるため、2017年1月に磁力計センサー庫の断熱工事を行い、日射による温度変化を半分以下に抑えることができました。

それ以外にもノイズの調査等を進め、昭和基地の地磁気観測の安定化や高精度化に向けた取り組みを行っています。


図1

図1  昭和基地の地磁気観測施設

写真中央のコンクリートの箱の中にフラックスゲート磁力計のセンサーを設置しています。その奥の青い古びたコンテナは地磁気変化計室という建物で、この中で地磁気絶対観測を行っています。地磁気変化計室は7次隊(1966年)で建設され、昭和基地で観測目的で使用されている建物では最も古い建物です。



図2

図2  磁力計センサーの傾斜と温度(2015年2月〜2016年1月)

上段が南北方向の傾斜変動、中段が東西方向の傾斜変動(共に単位は秒)、下段がセンサーの温度(℃)。夏季に観測された顕著な傾斜変動を赤枠で、センサー温度の日周期変動が顕著な期間を緑枠で示しています。




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