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平成28年度調査研究のトピックス(6)

雌阿寒岳で発生した水蒸気噴火の前兆現象に関する研究

研究代表者:高橋 幸祐

北海道東部の阿寒カルデラ辺縁に位置する雌阿寒岳は(図1a)、有史以前には大規模な火砕流やマグマ噴火が発生した成層火山ですが、記録に残る1955年以降の噴火の様式はすべて水蒸気噴火です。近年も山頂部にあるポンマチネシリ火口において噴火が発生しており、活動が活発な火山です。

水蒸気噴火は火山体内に存在する熱水系や地下水が、深部に存在するマグマ起源の高温ガスや過熱蒸気の上昇によって加熱されることによって発生すると考えられていますが、詳細な準備過程や発生メカニズムはよくわかっていません。これらの理解には地下の熱的状態の変化を明らかにすることが重要であると考え、気象庁地磁気観測所は雌阿寒岳において全磁力観測をポンマチネシリ火口近傍で1992年から開始しました。

2008年11月にはポンマチネシリ火口において2度の噴火が発生し、最初の噴火の直前に全磁力連続観測点(図1b)において噴火の前兆現象と考えられる全磁力変動を検知しました[1]。我々はこの前兆現象の発生メカニズムを明らかにすることは、水蒸気噴火の準備過程や発生場の理解に大きく寄与すると考え、データの再解析を実施しました。

カルマンフィルタを用いた手法[2]によって連続観測点における全磁力データを解析した結果、前兆現象と考えられる全磁力変動の開始時刻と振幅を正確に推定することができました(図2)。さらに、傾斜変動が観測された時刻[3]と全磁力変動の開始時刻がほぼ一致することが明らかになりました(図3)。推定された全磁力変動の原因としては熱消磁効果、圧磁気効果、流体の輸送による界面動電効果もしくはこれらの現象の混合が考えられますが、今回の解析で得られた結果を説明するためのモデル構築が今後の課題です。

参考文献

[1] 橋本 雅彦,森山 多加志,西村 三治,菅原 政志,有田 真,2009.雌阿寒岳の地磁気全磁力観測.月刊地球 31,693-698.

[2] Fujii, I., Kanda, W., 2008. New procedures to decompose geomagnetic field variations and application to volcanic activity, Geophys. J. Int., 175, 400-414.

[3] Aoyama, H., Oshima, H., 2015. Precursory tilt changes of small phreatic eruptions of Meakan-dake volcano, Hokkaido, Japan, in November 2008. Earth Planets Space, 67:119.


図1

図1  (a):雌阿寒岳の位置 (b):全磁力連続観測点(MEA)の位置

NWはポンマチネシリ火口北西に存在する噴気地帯を示す(地図の作成では国土地理院発行の「数値地図50mメッシュ(標高)」を使用した).



図2

図2  Fujii and Kanda (2008)の手法を用いて推定した雌阿寒岳連続観測点における火山性全磁力変動成分(期間;2008年9月20日-2009年1月26日)

噴火の前兆現象として観測された急激な全磁力の減少を矢印(P)で示す.細線は雌阿寒岳における日別地震回数を示す.三角は噴火の発生を示す.



図3

図3  噴火発生直前から噴火発生直後(2008年11月1日から11月29日)までの期間についての雌阿寒岳連続観測点における火山性全磁力変動成分(太線)および雌阿寒岳における日別地震回数(細線)

破線(T)はAoyama and Oshima (2015)によって観測された傾斜変動の発生時刻を示す.三角は噴火の発生を示す.