方位磁石が北を向くことから分かるように地球には磁場があります。この磁場を「地磁気」と呼んでいます。地磁気は、地球内部の核の対流運動、太陽活動との関わりの他、地殻の活動など様々な地球環境の変動に応じて、刻々と変化を続けています。
地磁気の大部分は、地球内部の外核といわれる部分で発生しています。ここでは鉄が主成分となっており、巨大な圧力と高温のため溶融状態にあります。地球内部磁場はこの導電性の高い鉄の流体運動により生じる電流により発生するものと考えられ、盛んにその研究が行われてきましたが、詳細は今なお未解明です。
東京で磁石の針が示す方向(地磁気の偏角)は、現在は北から7度西ですが、伊能忠敬が地図を作製した200年前はほぼ北を向いていました。350年ほど前に来朝したオランダ船の記録は、約8度東だったことを示しています。このことから日本付近の偏角は、この350年で東から西へ15度ほどずれてきたことがわかります。このような地磁気が数十年から数百年という長い間に変化することは世界中でよく知られており、これを地磁気の永年変化とよんでいます。永年変化は場所によりその変化の様子は様々ですが、これは地磁気の地球規模での空間パターンが変化していることを示しています。
−柿岡における偏角の永年変化−
日本付近で測定された観測値をもとに柿岡での偏角に引き直したもの)
外核起源の磁場の形は地球の中心に南北方向の棒磁石をおいた場合と似ていますが、その棒磁石の強さが少なくとも最近200年間減少を続けています。この変化は何万年以上にもわたって繰り返されている増減のほんの一部を見ているにすぎず、このまま地磁気がなくなってしまうわけではないと考えられます。
−地心双極子(地球磁場を棒磁石と見なした磁力)の減少−
−地表の磁場強度分布図 (全磁力2000年)−
地球の磁場の歴史の中では、いつも磁石のN極が北極方面を指していたわけではありませんでした。磁極が入れ替わる地球磁場の逆転が最近360万年の間に11回もあったことがわかっています。最も新しい逆転がおこったのは、78万年前です。
宇宙空間に広がった地球磁場は、太陽から放出された高エネルギー粒子の流れ(太陽風)の影響を受け、太陽と逆側に吹き流されたような形をしています。この地球磁場が支配する領域を磁気圏といいますが、地球は磁気圏をもつことで高エネルギー粒子に直接さらされずに守られています。
−地球磁気圏の構造模式図−
(地球の磁気圏は、太陽風のため昼側では地球半径の10倍ぐらいに圧縮され、夜側では細長い尾を引いています。)
太陽活動は磁気圏を通じて地球の環境に影響を与えています。フレアーなどの太陽表面の爆発現象が地球の磁気嵐の発端となって電波障害や通信障害を起こしたりオーロラをもたらしたりするのはその例です。
地磁気の変化を見ていると、1日周期の変化が認められますが、これは地球磁気圏と大気圏の間の電離層への太陽放射の影響を示すものです。地球の自転に応じて1日周期の変化として観測され、これを地磁気の日変化とよんでいます。
地磁気脈動と総称されている現象は、低周波自然電磁場の一つで、周期が0.2秒から1000秒くらいまでの周期的な変動で、地磁気・地電流の変動として観測されます。磁気圏内で発生した電磁流体波などが原因で磁気嵐時に活発となります。
地磁気脈動については国際的に、周期に基づく分類法がIAGAで決められています。
この分類によると、現象を二つに大別し、連続(continuous)で規則的な波形を持つ脈動をPc、波形が不規則(irregular)で、スペクトルの幅が卓越周期に比べて広い脈動をPiとよび、これらを周期によってさらに細かく分類しています。
岩石は加えられた応力に応じて磁気や電気を発生します。この性質により、地殻歪に伴って周辺の地磁気がわずかに変化することが知られています。そのほか地下水に関わる電磁現象も注目されています。
火山を構成する岩石は磁気を帯びて磁化しています。このため、山体内部の温度変化に伴って山体付近で地磁気の変化が観測されることがあります。また、火山活動により山体に加えられる応力に応じて磁気の変化が生じることもあります。