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地磁気絶対観測における基線値の異常値判定基準の定量化に向けて
伊藤信和,藤井郁子
要旨
地磁気絶対観測において観測基線値に含まれる異常値を客観的に検出するため,ロバスト統計学を適用して,異常値の判定基準を定量化することを試みた.使用したデータは,鹿屋出張所で2000年2月25日〜12月31日に観測されたH,D,Z成分の観測基線値データで,H・Z成分は58回分464個,D成分は72回分576個である.各回の観測の標本数は8個程度と少数でありロバスト統計を適用するのは難しかったが,1回の観測ごとに観測基線値から中央値を除いた残差を解析期間中にわたって集めた標本集団は,少数の標本を除いて正規分布的であることがわかった.そこで,約1年分の残差を使って異常値検出を行った. 約1年分の残差のQuantile-Quantileプロット(QQプロット)を作成し,標本分布が異常値のため正規分布的でなくなる部分を調査した.QQプロットの連続性が途切れるところをしきい値と設定したところ,H,Z成分で中央値からの差の大きさが中央絶対偏差の7倍,D成分で5倍以上を異常とみなすことになり,異常と判定された標本数はH成分が8個,D成分が13個,Z成分が12個であった.異常値を除いて計算した残差の平均と標準偏差を使って,異常値と平均との差を標準偏差で規格化してみると,本報告で用いた異常値判定は標準偏差の3倍と同程度かやや厳しい基準に基づいていることがわかった. ロバスト推定の考え方を導入することにより,客観的に異常値を検出でき,また1回ごとでは埋もれていた異常値の検出も可能になることが示唆された.本報告で扱った2000年の観測基線値データに関しては,中央絶対偏差の5〜7倍が異常値判定のしきい値の目安になると考えられるが,さらに精度の良い見積もりのためにはデータ数を増やしてしきい値を確定する必要がある.