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桜島における地磁気観測の可能性
藤井郁子
要旨
地磁気観測による桜島の火山活動検出の可能性を知るため,シミュレーションを行った. 本研究では,(1)最近の地下の長期的な蓄熱状況,(2)2006年6月の昭和火口からの小規模噴火,(3)ダイク貫入のそれぞれについて,熱消磁あるいは比抵抗変化が地表面でどのような磁場変化を生じるかを計算した. (1),(2)によって熱消磁が起こった場合に生じる全磁力変化は,南岳火口から2 km以遠の観測可能地域で0.01nTのオーダーとなり,全磁力計での検出限界ぎりぎりの値であることがわかった.降灰の影響を避けるためには坑道のような地下での観測が必要だが,その場合でも坑道内部の観測ノイズの問題があり,仮に観測できたとしても観測場所が限られることから熱消磁源を特定するのは不可能になる. (3)では,比抵抗の低い板状ダイクが貫入して地表面に到達した場合に,周期0.1〜10秒の地磁気変換関数に生じる変化を計算した.その結果,観測可能域の地磁気変換関数の変化は最大で0.01のオーダーであり,フラックスゲート磁力計で観測できる量であることがわかった.フラックスゲート磁力計を埋設して時間変化だけを利用するならば,降灰の影響も無視できる.また,桜島では,対岸の鹿児島市街地を走る直流電車の影響で昼間の10〜1000秒の地磁気変動観測は難しいことが予想されるが,それより短周期側であれば時間変化を追える可能性もある. 以上のことから,桜島の場合,全磁力計を用いた観測で期待できるのは大規模噴火による急激な変化のみである可能性が高いが,フラックスゲート磁力計であれば,大規模噴火に伴う急激な磁場変動に加えて,短周期の地磁気変換関数を用いた比抵抗変化モニターの可能性もあることが示唆された.