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桜島における地磁気観測
小木曽仁,生駒良友,瀧沢倫明,上杉忠孝,野坂大輔,豊留修一,大和田毅,藤井郁子
要旨
2006年6月に昭和火口から噴火が発生した桜島において,火山監視業務への地磁気観測の利用可能性を検討するため,我々は2006年8月から9月にかけて全磁力観測,及び地磁気3成分観測を行った.地磁気観測所では,桜島島内における地磁気観測は1999年以降行っていないが,2006年に新たな観測坑道(有村坑道)が整備され,我々にも利用可能となったことから,全磁力観測は坑道内にて,地磁気3成分観測は坑道内及び島内(野外)2点の計3点にてデータを取得した. 全磁力観測ではプロトン磁力計2機種とオーバーハウザー磁力計1機種を用いた.どの磁力計でも全磁力値は鹿屋における観測値より10000nTほど小さい値を示し,坑道内で使用されている鉄筋などの影響が非常に強いことがわかった.また,プロトン磁力計では信号が弱く,原理的に正しい観測値が得られない可能性が高い.オーバーハウザー磁力計では,一見安定した観測値が得られるものの,信号が弱く,減衰も早いため,その観測値が信頼できる値ではない.したがって,現在の火山活動レベルで期待される0.1nT程度の全磁力変動の検出は難しいことがわかった. 一方,地磁気3成分観測では,3点とも日中は人工ノイズの影響が非常に大きいが,夜間は良好なデータを得ることができた.夜間6時間分のデータを用いて地磁気変換関数を計算したところ,良好な観測データを得ている30秒から512秒の周期帯で安定した結果が得られた.地磁気変換関数は3点とも似た傾向を示し,3点の配置間隔では区別できない程度の広域的な電気伝導度不均質を反映していると考えられる.また,地磁気変換関数の標準誤差は最大で0.03程度であり,現在の桜島の活動監視に必要と考えられる0.01の精度より悪かったが,有村坑道では周期200秒から512秒にかけて標準誤差が0.01以下と十分な精度の結果が得られ,火山活動監視に利用できる可能性がある.