ナビゲーションをスキップ
地磁気S.I.の研究
山口又新
要旨
地磁気急変化は,SSC,S.I.,Bay,Pulsation及びs.f.eに大別されるが,その中S.I. 以外の諸現象については,現象論的にも,理論的にも,多くの研究が為され,かなりの程度迄明らかになって来た.又近時の惑星間空間に関する知識の増大に従い,発現機構も,推論の域を脱して,着実に実証されつつある.一方, S.I.は,急始変化研究の初期には,SSCと区別されず,両者を意識的に分けて取り扱い初めたのは,比較的近年に属することであり,その後も研究者達の多くの努力は,SSC研究に向けられ,その一部分をS.I.研究にさいてきたに過ぎない. 他の地球物理学的現象の研究分野からの注意もSSC stormにのみ向けられてきた嫌いがないでもない.勿論この小規模の変化が急始磁気嵐程,顕著に他の現象との関連を示さない事が一因であることも否めない事実であろう.けれども,S.I.は今後に予想される人工的擾乱を識別する為にも,或いは,より深く急始磁気嵐を理解する上にも,明らかにされねばならない現象の一つであろう.本稿の第一部は,SSCと比較するという立場から,S.I.の現象論を記述し,第二部に於いては,その発現機構に就いての考察を記述した.第一部に於いては,最初に,中緯度地方の水平分力記録に基き,四種の基本的変化型に分類し,その表示記号を提出した.それらの地理的分布,Dstに相当する擾乱及び赤道地方に於ける振巾の増大等を調査し,第一型の中の水平分力の増大する場合は,弱い急始磁気嵐と殆ど差がない事が明らかになった.一方この型に分類した変化の中で,水平分力の急減する現象は,かなり広範囲(低緯度地方でも)に起り, SSCの変化型の或る種の現象の水平分力の急減とは,異っている.水平分力の急減も,その急増と,ほぼ同程度の頻度で起り,急変化に伴なう脈動の様相は,両者で多少異なるように思はれる.第二型,第三型の尖塔状及び振動状の急変化は,擾乱中には数多く観測されるが,稀に静穏時に孤立して観測される.両者の成因が完全に同一か,否かは,明らかでないが,後者に属する変化が,擾乱中にも起っていることは,確かであろう.第四型は,第一型の水平分力の増大する場合と減少する場合が,ニ,三時間の間に起り,両者相候って,独立したー現象と考えられるものである.第二部に於けるS.I.の機構考察の基本的立場は,急始磁気嵐と殆ど同様の機構を考え,地球と微粒子流の相互位置関係の相違によって,一はSSCとなり,他はS.I.となるとするものである.即ち一次的原因と考えられる微粒子流が,地球を包み込む過程を経ないで,或いはその縁辺を掠めて過ぎる場合或いは微粒子雲の一部分のみが地球磁場に影響する場合等には,急始磁気嵐のような擾乱を起さないであろうと思はれる.そのような接近の仕方をする微粒子流も地球磁場の急変化を起し得る事を近似的に検討した.