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日本における地磁気変化ベクトルの異常について(第3報)−日本の固定観測所の特性−
久保木忠夫,大島汎海
要旨
地磁気変化ベクトルの水平分力 僣,偏角 僖(H僖の意味),鉛直分力兒の間には次の関係がある. 兒=A・僣+B・僖 この式の係数A・Bの周期に対応する特性の変化とその周期のときの分散を,日本の5つの固定観測所女満別・柿岡・鹿野山・下里・鹿屋について求めた.(第1〜5表,第8図)周期が短くなるとその周期特性は大きく変り,A・Bの分散も大きくなる.下里においてDuration2〜3分のBの分散が最大であり,その値は土0.9である.鹿屋のA と女満別のBの分散がもっとも小さく土0.04である. 女満別における兒/傳(ほほBに等しい),柿岡・下里・鹿屋における凾y/僣 (ほぼAに等しい)は日変化をする.その振幅は0.1〜0.27である.これはかなり大きい量であり,細かい変化を取扱う研究では無視出来ない量である.この日変化は僖/僣 または僣/僖とDurationの日変化によってひきおこされる.しかし一定のDurationに換算されたA・Bは日変化をしない.(第12〜22図) sscやsiの水平分力のDuration は北にある観測所ほど小さいが, 日変化の振幅は大きい.偏角のDurationは水平分力のそれより小さい値で, 日変化も小さい.また水平分力のDuratioの値は太陽のオルフ数が大きくなると小さくなる.この経年変化のためsscやsiの兒/僣の日変化は太陽活動度に影響をうける. 鹿野山観測所は柿岡の真南100kmの所にある.ここではパーキンソンベクトルや係数A・Bは柿岡のそれによく似ている.しかし鹿野山の変化ベクトルの鉛直分力は,水平分力より位相が甚だしく遅れて変化する.これは柿岡では起らない現象である.下里では反対であって,鉛直分力は水平分力の変化より位相が進む. 鹿野山において,急鋭に始まる現象では,鉛直分力の発現時間が水平分力のそれより0.3分〜2分おくれる.sscでは約1.5分である.これはDurationが大きくなると大きな値となる.(第32図)これの原因は全く分らないが,興味ある問題であろう. また著者の定義したベクトルS(α=tan-1(B/A) ,√(A2+B2) ,鉛直分力下向きを正とした)とパーキンソンベクトル(α=tan-1(B/A),cot-1√(A2+B2),鉛直分力上向きを正とした)との比較をした. 直感的に観測所の特性を知るには後者がすぐれているが,詳しい議論や他の地球物理現象と変化ベクトルの関係を調べるのにはベクトルSの方がすぐれている.