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地磁気観測所要報 第12巻 第02号, p.263, 1966年12月


車などによる人工擾乱


久保木忠夫


要旨

 車は多量の鉄材により作られている.このため車が地磁気観測室の近くを通ると大きな人工擾乱磁場をつくる.この量はほぼ車の重量に比例する.一般に擾乱磁場の水平成分は大きく,鈴直分力はそれの1/2 〜1/5 である.擾乱磁場の大きさは距離の−3乗に比例して減少する.そのおおよその量を,10mの距離のときの値に換算すると,大型パス・大型トラッグでは150γ,乗用車・小型トラックでは60γ,オートパイ・小型耕運機などでは5γ,自転車などは2γである.
  いづれの車の磁性も固有磁気と地磁気による誘導磁気とからなり両者の量はほぼ等しい.平均して車の磁気能率は,車の重量が300kgのとき5x10・4 である.いわゆる鉄もこの程度の磁性をもっているので,一般的に云えば1mの距離で1γの磁場を作るのは30gの鉄材である.モーター,特殊な測定器などはさらに大きく, 2〜5倍の磁性をもっている.したがって,磁性の強さの試験をしていない鉄材は,車の磁気能率の測定した結果(1m,1γ は30gの鉄)の10倍の安全率を見込んで観測室から遠ざけた方がよい.
  女満別・柿岡・鹿屋においては地磁気観測室は近くの道路を通る車により, 人工擾乱磁場の影響をうけている.この量を0.5γ以下にするには,大型バス・トラックに対して70m,乗用車・小型トラックに対して50m,その他の小さい車に対して25m以内に観測室に近づけてはならない.
  地磁気観測室は鉄筋を使用しない建物と30m以上離して建てられれば,相互の人工擾乱はないが,車が通行することを考えると少くとも50m,出来れば70m離すことが望ましい.鉄材を多量用いる建物などを建てるときは,特別に考慮する必要がある.
  特殊な車や,測定器もその磁性が観測の障害にならないよう遠ざけなければならない.これについて2,3検討した.
  これらの結果は地磁気観測所を新設したり,今後の運営に役立つことであろう.



[全文 (PDF; 日本語; size:1556KB)]


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