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柿岡の新標準磁気儀カスマー
柳原一夫,河村まこと,佐野幸三,久保木忠夫
要旨
柿岡の地磁気標準観測のため新しい標準磁気儀が1972年8月に完成し,カスマーと名付けられた.主な構成要素は4 台の光ポンピング磁力計,プロトン磁力計,角度測定器,計算処理装置などである.全体の装置は角度測定器を除いて自動的に動作させることができる.この標準磁気儀を使って地球磁場の各成分を0.1γの絶対精度で測定し,デジタル値として直ちにあらわすことができる. 4台の光ポンピング磁力計を使って全磁力,水平成分,鉛直成分,偏角の四つの成分を同時に測定するので,必要なときには0.01 秒の時間分解能をうることもできる.またある成分の測定値を他の成分の測定値から合成したものと比較することによって,各磁力計の動作状態を監視したり精度を検討したりすることもできる.ある成分用の磁力計が故障した時にはAlldredgeの提唱したASMO方式によって補うようになっている.光ポンピング磁力計は精度は高いが,必ずしも絶対値確度がよいとはいえないので,プロトン磁力計と角度測定器によってその器械定数を検定する.角度測定器は新たに開発した測定原理を使った一種の磁気経緯儀で,地球磁場の偏角と伏角を角度1秒の精度で測定する.プロトン磁力計による全磁力測定と合わせて,地球磁場全成分の絶対値を与える.これによって較正された光ポンピング磁力計を使えば必要な時の地球磁場絶対値を直ちにうることができる.必要な計算処理は2台の超小型電子計算機で行なう. 1972年8月以降数カ月の試験結果では,0.1γの絶対精度をうる目標はほぼ達成されたように思われる.