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地震発生に関連した変換函数の時間変化(U)
佐野幸三
要旨
前回の報告(Part T)で,柿岡地磁気観測所のKASMMERシステム毎分値データを用いた地磁気CA変換函数の解析法について述べ,Mar. 1977〜Dec. 1978の資料について主として柿岡周辺の地震発生に関連した変換函数の時間的変化の予備的な解析結果を報告した.引き続き本報告(Part II)では,このような地震前兆現象的な変換函数の変化を再確認するために,同資料について詳細な統計的解析を行った結果を報告する. 今回の解析は,関連する地震についてその発生領域を2,3の小領域に分割し,各小領域からある基準以上の顕著地震M=4.0〜6.0を12〜18個それぞれ選定し,それらの地震に対して前回と同様の重ね合わせ統計法により,変換函数の地震前兆的変化を検出しようとするものである.また,このような震源域の分割により,各震源域における地震前兆的変化の差異についても究明しようとするものである.今回のこのような解析により,各領域における地震の前兆現象的な変換函数の時間変化がより明確に導き出され,前回の結論を十分に裏付ける結果がえられた.これらの地震前兆現象的変化は短周期帯(10,20,30,および60分周期成分)でより顕著であり,ごく常識的な地震が柿岡に近く,規模が大きければ,柿岡の地震前兆的変化は大きいらしいこともある程度確認された.統計的に検出された変換函数変化の振幅は高々0.01であり,非常に小さいが,それらはかなり高い有意性を持つものである. 更に今回は,筆者の方法とは別のパワー・スペクトル解法による変換函数(周期=20,30, 60分のみ)の資料(白木,1977)について,同様の解析を行い筆者の結果と比較してみた.両者は概略において一致した結果を示しており,この点からも柿岡における変換函数の地震前兆的変化は間違いのない事実として確認された. このような地震前兆的変化の他に,また前回も指摘した地磁気活動度依存性とも別の27-29日周期性を持った変換函数の変化が,特に長周期帯(90,120および180分周期成分)に存在するらしいことが,今回の新しい事実として示唆される.なお,変換函数の時間変化に関連する地磁気活動度依存性については,今回も解析を行ったが,重ね合わせ統計平均的には前述の地震前兆的変化または上述の周期的変化より少なくとも小さいことがわかった.