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阿蘇火山の地磁気観測(T)
加藤誼司
要旨
火山噴火予知の基礎的研究を行うため, 1979年より阿蘇山における地磁気観測が始められた.阿蘇中岳の北約5kmの阿蘇山麓,及び中岳火口西北西約0.8kmの阿蘇山上の二地点で地磁気全磁力の連続観測が行なわれている.その他,年2回の移動観測が行なわれている.移動観測では携帯用プロトン磁力計による全磁力の観測が6点で,GSI一等磁気儀と携帯用プロトシ磁力計による成分観測が5点で実施されている. 阿蘇山上および山麓と鹿屋の間の全磁力差は,地磁気日変化の影響をさけるため, 00時から02時(JST)の夜間について計算しているが,外部変動磁場の影響をうけてバラツキは大きい.夜間の外部変動磁場の主なる原因は,赤道環電流によるDst磁場によると考えられ,阿蘇と鹿屋のDst磁場変動の地域性をDI補正にとり入れた補正を行った.その結果,全磁力差夜間値(00-02時JST)のバラツキは約1/3に減少した. 補正により,火山活動によると思われる種々の全磁力差の異常変化が,とくに山上と山麓の全磁力差に認められた.その典型的な例は,1979年9月6日の爆発前後の変化で,爆発前の8月中旬から爆発当日までは山上と山麓の全磁力差は急な増加傾向にあったが,爆発後は安定な状態に変わった.