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地磁気観測所要報 第26巻 第02号, p.25, 1998年3月


BAYTAP-Gを用いた地電流データの解析から判った、水戸・柿岡・会津・沼津地域の地電流特性 -地電流データの解析手法としてのBAYTAP-Gの評価-


小嶋美都子


要旨

 BAYTAP-Gを用いて,水戸,柿岡,会津,沼津地域の地電位変動データを解析した.柿岡以外のデータはすべて, NTTの施設を利用した超長基線観測値である.解析した4地域の地電流データ,参照観測値として用いた柿岡地磁気観測所の地磁気のデータとも,毎時平均値を用いて月毎(N=744) に解析を行った. BAYTAP-Gを用いると,地電流の変動は,地磁気変動による誘導成分,潮汐成分,ゆっくりした変動(トレンド),残差(irregular component)の4成分に分解することが出来るが,これまでは主として,いかに効率よく4成分の分解が出来るか,いかにして効率よく微小な地電流の異常変化を検出出来るかについて検討し,それらについての結果はすでにいくつかの論文にして発表済みである.当論文においては, BAYTAP-Gによる解析の結果得られる,誘導成分のamplitude factor,潮汐成分の振幅,及び最低ABIC値に着目し,この解析により何が判るか,問題点として何が残るか等を検討した.周期別誘導成分のamplitude factor (振幅係数)から求めた各地域の見かけ比抵抗の値は,水戸・柿岡・沼津の3地域と会津地域との間で大きなコントラストを示した.潮汐成分の振幅も,見かけ比抵抗値でみられたと同じ地域差を示した.各解析期間(1ヶ月)中の最低ABIC値は,その期間の地磁気活動度に非常に良く対応していることを改めて示した.このことは,ここで用いた方法では,特に,地磁気の荒れた期間には,誘導成分を完全には分離することが出来ないことを示唆している.また,地磁気誘導成分を計算する際に,地磁気X-,Y一成分の他に, z一成分も用いると,最低ABIC値は,冬季にはかなり下がるが,夏期においては, z一成分の使用の影響はほとんど最低ABIC値には現れない.このような,地電流の地磁気変動による誘導成分への,地磁気Z一成分の役割の季節変化は,共通して用いた柿岡における地磁気変動そのものの特性によるものであろうと考えられるが,実際に何故この様な季節変化が起きるかについて明確な説明はできなかった.更に,最低ABIC値は,参照観測値の地磁気の値として,過去の値と共に,未来の値(advanced associated data) をも用いることにより,劇的に低下することが判明した.



[全文 (PDF; 英語; size:1300KB)]


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