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阿蘇火山における岩石磁気の調査
伊藤信和・澤田正弘・山本輝明・重野伸昭
要旨
阿蘇火山の岩石磁気的性質の基礎資料を得るため,2003年から2004年にかけて阿蘇中岳火口付近を構成している3つの地質体(最新期火砕丘,新期山体,古期山体)の試料47個を採取して岩石磁気の調査を行った.その結果は以下の通りであった. (1)中岳火口付近で採取した試料の残留磁化を常温で測定したところ数A/m〜数10A/mの値が得られた.このことから測定した試料は一般的な玄武岩の磁化値(10A/m〜)に近いものと考えられる.また,磁化の値は地質体ごとに異なる傾向を示すこと,岩石試料の種類によっても異なる傾向を示すこと,同じ露頭の岩石でも同じ磁化の値を示すとは限らないことも判った. (2)段階熱消磁による残留磁化の変化を調べた結果からは地質体の異なる試料は異なる熱消磁の傾向を示すことが判った. (3)今回初期帯磁率の測定を行い誘導磁化の量を見積もったところ,中岳火口付近の試料の誘導磁化はおよそ1 A/mであった.また一部の試料の初期帯磁率が400℃をこえたあたりから変化するという結果を得た.また,帯磁率の温度変化を調査したところ,一定温度までは緩やかに,一定温度以上になると急激に帯磁率が変化する傾向がみられた.
2009年2月6日受付, 2009年3月13日改訂, 2009年3月17日受理